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封魔領域4

 そんなことは今さら言われなくたって分かっている。

 俺だって後先を考えずに行動するほど馬鹿じゃない。

 でも、そうしないと乗り越えられない壁が目の前に現れた時、逃げることすらも困難な場面に追いやられた時、それをどうにかできる可能性が少しでも俺にあるなら、そのすべてを尽くして抗うことのなにが悪いと言うのか。


「……俺だって、それぐらい分かって──」

「いいや、分かっていないな。貴様のそれは表面上で理解したつもりになっているだけのものだ。本質をまるで捉えていない」


 本質? 本質ってなんだよ。

 俺が間違っているっていうのなら、なにがどう間違えているのか、それを教えてくれよ。

 分からないんだよ。他人が俺の言動にどんな感情を抱くかなんて。


「貴様のスキルという力。その力の一端である、自身を死の淵へと近づけることを代償に能力を向上させるもの。そんなものを抱えているが故に、自己犠牲を前提とした立ち回りを平然と選び、己にとって大切なものを守ろうとするその意志が、どれだけこの子の負担になっているか考えたことがあるか?」

「……それは」


 考えたことぐらいはある。

 けど、それが俺の役割で。それが俺にとって唯一といえる長所なんだから、体を張るのは当然の行為のはずだ。

 そのことでクレアが負い目を感じているのだとしたら悪いとは思うが、だからといってそれを止めたら俺の価値なんて……。


「これまでに二度、貴様はクレアちゃんの前で瀕死の重傷を負っているだろう。それを見せられたこの子が、自分を守るために血反吐を吐き、その身を貫かれ、軋んだ体に鞭を打ち続けて、死の間際まで消耗しきった貴様の姿を見せられなにを思ったか、考えたことはあるか?」

「……」


 クレアは優しい子だ。

 他人の痛みに敏感で、自分が辛くても、それを差し置いて周りのために行動できる素晴らしい子だ。

 だから、たぶん、すごく悲しい気持ちになった、だろうな。

 それがどの程度のものかは分からないが、なにもかもが嫌になるぐらい落ち込んだだろうな。

 でも、たとえクレアが悲しむ羽目になったとしても、この子を無事に救えるのなら。


「ふぅ。まだ分かっていないという目をしているな。ならば、逆の立場になって考えてみろ。もしも、貴様がクレアちゃんに守られる立場だったなら、それはどんな気持ちだ?」

「……っ」


 そう言われてみて、ようやく俺は先程からシャーロットが言っていたことを理解した。

 そして、その事実に気づくと同時に血の気が引き、立ちくらみを覚えるほどに目の前が明滅して見えた。

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