封魔領域3
「なにを呆けた顔をしている? そも、クレアちゃんがこの道を選んだのは貴様の発言が原因だろう、弟子よ」
「……どういうことだ?」
俺が、クレアに掛けた言葉が原因?
なんだそれは? クレアに向けて俺はなにを言った?
「昨日のことだ、貴様はこう言ったそうだな。人にはそれぞれ役割がある。自分にも、クレアちゃんにも、その他の者にも、得手不得手があり、その強みを伸ばし生かすことがパーティーにおいて重要なのだと」
「……あぁ。そう、だな。うん、たしかに言った。けど、俺は焦らずにゆっくりと強くなっていけばいいとも言ったと思うんだけど」
そう言わないと、この子はどんどんと無理を重ねて、いずれ壊れてしまいかねないから。
「うむ。聞いているとも。それについては我も弟子の意見に同意し、クレアちゃんへ忠告もした。だが、それでも尚、この子は今までよりも過酷な道を進むことを決めたのだ」
クレアは頑固なところがあるから、一度決心したらそれを貫き通そうとすることはままあることではあるが、俺のどんな言葉がクレアにそれを決定づけさせてしまったのか、そこの見当がつかない。
「そう。貴様の言った、「どうしようもない敵が現れた時に、なにをしてでもなんとかするのが俺の役割」という言葉が原因でな」
「……は? え、いや、その言葉が原因なのか?」
特におかしなことを言っている、ということはないよな?
スキルなんていうデタラメで使い勝手が悪い、でも、短時間に限定すれば実力を大きく超えた結果を残すことのできる力を持っている以上、当たり前に担わなければならない役割だ。
それでどうしてクレアが無茶をすることに繋がるというのか。
「ふっ。なるほど、たしかにクレアちゃんの言った通り重症だな。これは」
「なんの話だよ」
「貴様の話だ。弟子。様子を見るに、完全に無意識での発言なのだろうが、それがとてつもなく異常なことだと気づいているか?」
なにを言ってるんだ、この子は?
異常? なにがどう異常だっていうんだ?
分からない。一体なにを言いたいのか、それがどういう意味なのかがまるで理解できない。
「分からないというのなら教えてやろう。貴様の言っているそれは、自己の犠牲を省みないただの傲慢だ」
いつもは一切感じさせない威圧感をその赤い瞳に込め、シャーロットは俺の発言を糾弾する。
「この子を守るためならば自身の死すらも厭わないという姿勢が正しいものだと、本気で思っているのか? 馬鹿め、そんなわけがあるか。そんなものは三流以下の愚策にしかすぎんことを知れ」