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封魔領域

 《封魔領域》。

 シャーロットの口にしたその名前に覚えはないが、この魔力で体を覆われている感覚は初めてじゃない。

 これは以前、シャーロットに魔術の扱いを教わりにきた時、俺に魔力の制御法を学ばせるために彼女が実行した訓練法の一つだ。

 だが、その時のものと、今俺たちを覆っているこれとでは明らかにその距離が違う。

 以前のものも体の周囲を覆うという意味では同じものではあったが、それでもかなりその空間には余裕を持たせていた。

 でも、今回のこれはほとんど、というよりも実際に魔力が俺たちの体表に触れている。

 感じる魔力の密度でいえば以前の方が高かったような気はするが、これだけ密着されていたら外に向けて魔力を放出することなんてできないような気がするんだけど。


「さぁ、クレアちゃん。いつでもいいぞ?」


 と、そんなことを考えている間にもシャーロットが合図を送り、クレアがそれに頷いて応え、腰から引き抜いた短剣を構えた。

 そして、大きく目を見開くとその魔力を解放させ、周囲の魔力を押し退けて魔刃を発動させた。


「おお!」


 すごいなクレア。

 こんな中でよく魔刃なんて発動させられるもんだ。


「魔力を無駄に大きく消費させすぎだ。もっと感覚を研ぎ澄まして魔力を収束させろ」


 だが、シャーロットはそれではまだまだ不十分だとばかりに、クレアへ注文を出す。

 それに応えようとしてクレアは溢れ出す魔力を小さく押し留めようと努力するが、ただでさえこの空間内で魔刃を発動させるだけでも難しいのに、そこから更に魔力を操作するのはとてつもなく難易度が高いようで、小さくなった魔力はそのまま留まることなく消え去ってしまった。


「ふむ。やはりまだ時期尚早だったか」


 その様子を見て、シャーロットはそのような言葉を漏らす。

 一方で、クレアはこの場で魔刃を発動させるために極度な集中力と魔力を消費したためか、額に汗を浮かばせ、大きく肩で息をしていた。


「大丈夫か、クレア」


 そんなクレアに近づいていき背中をさすってやると、疲れたような弱々しい笑みをこちらに向けてくるが、この空間内では念話すら繋ぐことができないので言葉はない。

 が、口をぱくぱくと開き、こちらへなにかを伝えようとしていたので、《思念会話》を発動させるとクレアとの間に経路を設けた。


「ん。《思念会話》繋いだけどこれで話せるか?」

『うん。ありがとうアスマ君』

「おう、どういたしまして」


 そうして礼を言ったあと、クレアは小さな声で『やっぱり』と呟くと、こちらへと向き直りもう一度視線を合わせてくる。


『あとね。少しの間これを繋いだままにしておいて欲しいんだけど大丈夫?』


 遠慮がちにそう聞いてくるクレアに「もちろん」と快諾すると、クレアはにっこりと微笑んだあと、なにかに集中するように目を閉じてみせた。

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