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 「あの、それでさっき言ってた体の一部を失うというのはどういう意味なんでしょうか?」

 「あぁ、その指輪の効果は先程君の言っていた通り、ステータスの向上と結界を越えるための道しるべとしての機能だ。だが、問題はそれとは反対の、負の効果にあるのだ」


 負の効果。つまりはメリットとは反対のデメリットの効果もこの指輪にはあるということか。何だかスキルの代償に似ているような気がするな。


 「それは嵌めた指輪を外すことにより発動し、効果は指輪を嵌めた側の腕の喪失だ」

 「え? え? それって腕を一つ全部なくしちゃうってこと? 指輪を外しただけで?」

 「そうだ。外しさえしなければ問題はないのだがな」

 「わぁ、大変だよアスマ! 絶対に外しちゃ駄目だよ? ほら、グローブ嵌めて! 指を隠して!」


 ミーティアが慌てて俺が先程外したグローブを押し付けてくるけど、正直かなり肝が冷えている。指輪を外しただけで腕がなくなるなんて、どんなふざけた効果だそれは。確かに指輪の性能自体は破格だがデメリットが重すぎる。俺はもう一生この指輪を外すことができなくなったようなものだ。…あれ?構わないと言えば構わないのか? 別に邪魔になるわけでもないし案外大丈夫なのかもしれない。


 「そんな指輪いったいどこで手に入れたのよ?」

 「いや、あれは私が造ったものだ」

 「えぇ…。あんな危険なものどうやって?」

 「…そうだな、アスマ以外には話したことなんだが、私は銀狼族の者でありながら金色の毛を持って生まれてきた特殊な個体なのだ」


 うん、まぁ明らかに銀狼ではないもんな。獣人にとって毛色が他と違うことがどういう意味を持つのかは分からないが、それがどうしたというのだろうか?


 「そして、それと同時に私には他の者たちにはない、ある能力が備わっていた」

 「ある能力?」

 「あぁ。それは呪力を付与する力だ」


 呪力付与?…ってまさか、この指輪って呪いの装備かよ! そう考えれば確かに指輪の性能にも納得できる。

 もしかして、ゲームの呪いの装備も教会で呪いを解いてもらわないと外せないのってそういう理由なのか?


 「この能力のせいで一部の魔族に狙われてこの場所に引きこもる羽目になってしまったわけだがな」

 「え?魔族って友好な種族なんじゃなかったんですか?」

 「何、アンタ知らないの? 魔族って言っても全部が友好的なわけじゃないわよ。ランドグリムのやり方が気に食わないってやつは今でも魔王の座を狙って色々暗躍してるって話だし」

 「へぇ」


 その一環で村長の呪力付与の力を狙ってるってことなんだろうけど、正直多少力を蓄えたところでランドグリムに勝てるとは思えないんだけどな。まぁ、知らんけど。

 あ、というか今気づいたんだけど、もしかして俺って魔族が送った配下か何かと疑われてた? だから指輪を見せた時あんな反応を見せたのか。


 「それで、あの。この指輪って外すわけにもいかないんですが、どうすればいいでしょう?」

 「外すことができない以上は君が身につけておくといい。いざという時のために息子に持たせていたものだが、あいつは修業に行くと言ったきり帰ってきていないからな」

 「え? それって大丈夫なんですか? もしかして魔族に拐われたりとか」

 「ふむ。その可能性もないではないが、やつはもう一人前の戦士だ。もしそうなっていたとしても私は助けにはいかないし、やつも助けになど来られたくはないだろうからな」

 「は、はぁ…」

 「獣人族って本当そういうところが意固地というか何というか」


 正直薄情なようにも感じるけど、息子のことを信頼しているからこそそういう言葉が出てくるんじゃないかと思うと、ちょっとそういう関係は羨ましく思わないでもない。


 「ところで村長さん。アスマに聞きたいことってもう全部聞き終わったんだよね?」

 「む? そうだな。あぁ」

 「ならもう帰してあげてもいいよね?お家で妹が待ってるみたいだから、できれば早く帰らせてあげたいの」

 「そうだったか。そういうことなら早く帰ってやるといい」

 「あ、はい。すみません慌ただしくしてしまって。指輪は有り難く頂いておきます。色々ありがとうございました」

 「うむ。…と、そういえばここへ来た時君は傷を負って多量の血を流していたそうだな。ならこれを飲むといい」


 そう言って村長は立ち上がると、戸棚の戸を開け中から小瓶を取り出し、俺に手渡してきた。


 「何ですか、これは?」

 「簡単に言えば血を増やす薬だ。材料自体はこの森で取れるものを使用しているので特に希少なものではない。遠慮せずに飲み干すといい」

 「ありがとうございます。じゃあ早速」


 小瓶のコルク栓を抜くと一瞬生臭いような匂いが鼻をついたが、薬ってものは大体が独特な匂いのするものだしせっかくの頂きものなので 呼吸を止めると一気に小瓶の中身を呷る。


 「~~~~っ!?」


 と、突如口の中を苦味と酸味と辛味とえぐみと生臭さが一気に駆け巡り、あまりにも強い刺激に思わず吐き出しそうになるが、なんとか堪えてそれを無理やり飲み干した。


 「《クリエイトウォーター》」


 そして、口の中に残る暴力的な味の残滓を魔術で生成した水で洗い落とすように一緒に流し込んだ。

 おえっ。飲み干して尚、胃の中から匂いが立ち上ってきやがった。何を使って作り出したかは知らんが、こんな酷い味の薬は初めて飲んだ。本当に吐きそうなんだけど、きっつ。

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