表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
464/644

鎧の人

 ギルドへと到着し、職員の人たちに頭を下げて受付前をすると、早速とばかりに訓練所の扉を開き中へと挨拶を投げ掛ける。


「おはようございま──っっ!?」


 しかし、その声は飛び出してきた轟音によって書き消されてしまった。


「……なんだ、今の」


 そう思いつつもおそるおそる中を覗き込んでみれば、訓練所の中央でゲインさんと全身鎧を着込んだ何者かが拳と拳をぶつけ合わせていた。


「……あの人、誰だ?」


 怪訝に思いながら鎧の人物を見詰めているとその視線に気づいたのか、二人は拳を引いて同時にこちらへ顔を向けてくると、鎧の人は軽く会釈をし、ゲインさんはにこやかな笑顔を浮かべていた。


「おや、アスマ君。いらっしゃいましたか」

「あ、はい。おはようございます」


 再度ゲインさんに挨拶をし直して、ちらりと鎧の人へ視線を向けてみると、それがどういう意味を持つ視線なのかを察したゲインさんは一つ頷いてそちらへと手を向けた。


「アスマ君。こちらの方は」


 そう言ってゲインさんが鎧の人を紹介してくれようとしたところ、その人はゲインさんに掌を向けてそれを止めると、こちらへと歩み寄ってきた。

 そして、目の前まで来たところで手を差し出されたので、その手に自分のそれを重ね──その瞬間、天地が逆さまになり、背中に強い衝撃が走った。


「がはっ!?」


 圧迫された肺から空気の塊が吐き出され、唐突に呼吸が乱れたことで混乱に陥りそうになるが、このままでいるのはまずいと思い床を転がってその場から離れ、荒い息をつきながらもなんとか体勢を立て直し辺りを見回す。

 すると、少し離れた場所には「おや?」とばかりに首を傾げた鎧の人が、中央にはゲインさんが、そして、壁際にはその存在に気づかなかったもう一人全身鎧の人物がいた。

 そこまで状況を把握して、おそらく自分はそこで首を傾げている鎧の人に地面へ投げつけられたのだということに思い至る。


「……えっと?」


 だが、なぜそんなことをされたのか、ということがまるで分からない。

 俺なにかしたかな? もしかして、さっきのって握手じゃなかった? だからぶん投げられたってこと?

 そう考えてはみたものの、分からないことをどれだけ突き詰めて考えようが答えが出るはずもなく諦めてその場で立ち上がる。

 そうして体の調子を確かめながら元の位置まで戻ると、鎧の人がこちらへ向けまた軽く会釈をしていたので、警戒しながらこちらも会釈を返す。


「失礼。まさか、あれほど簡単になんの抵抗もなく無様に叩きつけられるとは思っていなかったものでして」

「……え? あ、はい。それは、なんかすいません?」


 なんと返していいのかが分からずとりあえずなんとなくで謝ってしまったが、今のは謝る必要はなかったような気がする。

 ……というか、もしかして俺今煽られた? それに、今の声的に、この人女か?


「それと、申し遅れまして。私はソニアリスと申します」

「はぁ、どうも。自分はアスマです」


 無機質な声でそう告げてきたソニアリスという女性に自分からも名乗り返すと、彼女はまたしてもこちらへ手を差し出してきた。

 ……罠か?

 とは思いつつも、それが今度こそ握手として差し出されたものだった場合、ここでその手を取らないことは失礼にあたるだろう。

 ということで、一抹の不安を覚えながらもスキルで能力を向上させて警戒しながらその手を握ってみれば、今度はなにごともなく普通に握手が交わされた。

 ……なんなんだこの人。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ