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討伐104

『アクティブスキル《限定解除》発動』


 戻ったばかりの力を使い潰すように、躊躇なく《限定解除》を発動して直後に能力向上系のスキルを一斉に発動して肉体をより強靭に高めていく。

 そして、《獣の衝動Lv2》の副次効果によって暴色に染まった思考に突き動かされるようにして《力の収束》を使用し、全力の跳躍で瞬時に相手との距離をゼロにする。


「あぁぁぁぁらっ!!」

「!?」


 様々なスキルに加えて《起死回生Lv1》までが発動している影響で、その速度は自分自身ですら抑え込むのが難しいが、《感覚強化》によって鋭敏化した感覚を《限界突破》の肉体操作能力で無理やりに制限し、驚いた表情を浮かべている獣の顔面に蹴りを叩き込んだ。

 その直撃を受けた巨体は高速で撥ね飛び、大木をへし折り、岩を押し砕きながら水平に吹き飛んでいくが、それを追い掛けるために《力の収束》を連続で発動させ、追いついたところを真上からの回し蹴りで強く地面に打ちつける。


「おぉぉぉぉっ!!」


 轟音を響かせながら、地面へ突き刺さるようにして陥没痕を生じさせたそれへ向け倒れ込むように全力の拳を打ち込むと、凄まじい衝撃が発生し、大地を揺るがすようにして更に陥没痕を大きくしていく。

 だが、それを受けて尚、獣の身から溢れ出している妙な気配が鎮まることはなく、今も大きな力の波動を発しているので、止まることなく手足による大きな一撃を何度も何度も打ち放っていると、急激に大きな魔力の高まりを感じ、直後に《危険察知》が発動したので弾かれるようにその場を飛び退くと、先程まで自分が立っていた場所から鋭く尖った土槍が突き出してきた。

 そして、それに続くようにして、何事もなかったかのように黒い獣が陥没した地面の底から起き上がってくる。


「やれやれ、知ってはいたが、いざ自分で体感するとやはり凄まじい力だな。まさか今の俺が抵抗する暇もなくここまで一方的に打ちのめされることになるとは思いもよらなかったぞ」


 そう言いながらも、黒獣はまるでダメージを感じさせないような動きで陥没痕から抜け出すと、にやりとした笑みを浮かべてこちらに視線を向けてきた。


「くくっ。しかし、だ。貴様に屈辱的な仕打ちを受けるたびに、俺の中で肥大化した憎しみが更にこの力を大きくしてくれた。あぁ、だが、これはいけないな。あぁ、いけないな」


 獣が独り言のようにそう呟くと、それと同時に体から謎の力が奔流となって溢れ出す。


「力が大きくなるにつれて、自分を抑えることが難しくなってきている。困ったものだ。これではこの力をきちんと試す前に、貴様の命が先に尽きてしまうかもしれんな」


 そう言った直後、瞬時に足下から膨れ上がった魔力の気配が感じられ、《危険察知》が警鐘を鳴らす。

 スキルからもたらされる情報が脳内を駆け巡り、それが左右からの同時攻撃だということが判明したので、瞬間的に前へ出て、発動した魔術アースファングを躱し、再度獣へと攻撃を仕掛ける。


「らっ!!」


 跳躍の勢いを乗せて繰り出した拳を獣の額に打ち込み、強烈な手応えを得ると共に衝撃がその身を貫いた。

 だが、先程とは違い、その一撃を受けても獣が吹き飛ぶようなことはなく、地面を削りながら僅かに後退しただけで悠然と攻撃を受け止められてしまう。


「!?」

「なにを驚いている? 言ったはずだ。貴様への憎しみが俺を更に強くしたと。もう先程と同じ攻撃は通じないと思え」


 まさかここまであっさりと自身の攻撃を受け止められるとは思っていなかったので一瞬動きが止まってしまうが、本能に突き動かされるようにして連続で攻撃を打ち放っていく。

 一撃一撃のダメージが薄いからといってまったく効いていないわけじゃないんだろ。だったら、こいつが倒れるまで何度だって打ち続ければいいだけだろうが!

 並みの魔物なら一撃で葬り去ることができる威力を秘めた拳打、蹴打の嵐を見舞い、獣の行動を抑制すると同時にその身へとダメージを蓄積させていく。が──


「ふん、(ぬる)いわ!」


 咆哮と共に振るった頭で蹴りを弾かれてしまい、体勢が崩れたところに猛烈な勢いの突進を受けて撥ね飛ばされてしまう。


「っ!」


 その威力自体は《赤殻》によって阻まれ俺自身にダメージは一切通っていないが、その衝撃自体を受け止めきることはできず、先程とは反対に今度は俺が真後ろへと吹き飛ばされてしまい、背後の大岩へと背中から強く打ちつけられてしまう。


「ほう、今の一撃を受けてなんの痛痒も示さないとはな。どうやら攻防においては互角。いや、少しばかり俺が劣っているとみるべきか。だが、貴様のそれは所詮は仮初めのもの。時間がすぎればいずれ消え去る程度のものでしかない」

「はっ。だったらなんだ? この力が消えるまで逃げ回るか?」

「ふっ。そのような下らない真似をするつもりなど毛頭ない。貴様には最大限の絶望と苦痛を与えてやらねば気がすまないからな」


 獣はその瞳の奥に秘めた憎悪により、焼きつくような視線をこちらへ向けてきた。


「そのために、こちらも力の出し惜しみはなしにするとしよう」


 そう言って、再び強大な魔力を操り魔術を発動させようとする。

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