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討伐90

 それを好機とみてクレアの傍に転がっているワイルドボアに近づくと、雑嚢から油の入った小瓶を取り出してその中に入れてあった油を振り掛け、次に松明と火打石を取り出し手早く火をつけるとそれをワイルドボアの体に押しつけその体に火を燃え移させる。

 すると、その熱さに驚いたワイルドボアは悲鳴を上げながら転がって火を消そうとするが、体に纏わりついた油によって中々鎮火させることができないようで、尻を蹴りつけてやると驚いて体を跳ねさせながら木々の合間へと転がっていった。


『……アスマ君?』

「クレア、今のうちに強壮薬飲んで体力を回復しておいてくれ。悪いけどまだもう少しクレアの力が必要になるから」


 その行為を見ていたクレアが不思議そうな表情でこちらを見上げてきたので、そう言って体力の回復を促す。

 するとクレアは力強く頷いてポーチから強壮薬を取り出すと、一息でそれを飲み干し疲労を全快させる。

 それを見届けた後、クレアへ先程の行動の意味とこのあとの行動について話を通しておく。


「時間がないから手短に話すけど、これから俺はこの森に火を放ってこいつらを混乱させる。そのための火種はさっき撒いたし、これからこれを使って更に被害を広げてくる」


 手に持った松明を少し持ち上げてみせると、クレアは驚いたような顔をして『でも』と言葉を切り出した。


『……そんなことしたら……全部燃えちゃうよ?……どうやって消火するの?』

「消火ならあの白いのがやるさ」


 こちらに視線を向けていたのか、周囲のやつらと同様に視界が利かなくなり頭を振っているワイルドボアのリーダーを指差してそう言うと、少し考えてその意味を悟ったのか『あ』と声を上げてこちらを見上げてきたので頷いてみせる。


「そう、ここはあいつらの住み処であると同時に狩り場だ。繁殖で数が増えたからここにやってきたって話だし、それならこの森のどこかに戦えない子供とそれを守ってるやつもいるはずだ。だったらあいつはそれを見捨てたりしないだろうさ、絶対に」


 リーダーとして配下に非情な命令を出すこともあるだろうが、それでもあいつは群れのリーダーなんだ。なら、全部の仲間を見捨てるなんて真似をするはずがないよな。


「そうなった時が絶好の機会だ。あいつがそっちで手一杯になれば魔術に備える必要もなくなるし、混乱したやつらをまとめることもできなくなる。そこでカイルと協力して一気にこいつらを殲滅してくれ。そうしたら、あとはもうあいつを倒せばそれで終わりだ」


 上手くいくかどうかは完全に賭けになるし火に曝されればこっちも危険な自爆覚悟の最悪な作戦だが、なるべくこちら側には火が回らないようにしてやればクレアとカイルたちだけはなんとか逃げ切ることができるだろう。

 俺自身はどうなるか分からないが、それでもその程度のことでクレアを守れるのなら安いもんだ。

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