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討伐87

 「っ!!」


 それを目にした瞬間、背筋に電撃が走ったかのような衝撃を覚え、それに突き動かされる形で自動的に体が動き出す。


 「えっ、ちょ、兄ちゃん!?」


 戸惑ったようなカイルの声が背後から聞こえてくるが、それに取り合うこともなくただひたすらに全力で走る。一刻も早くクレアの下へと辿り着くために。


 「はぁっ!はぁっ!はぁっ!」


 息が乱れて肺が悲鳴を上げているかのように痛みを発しているが、その一切を無視して足を回し続ける。心の中に突如として発生した焦燥感を振り払うように。

 今ここで俺が加勢に入ったところでクレアの助けになれるとは思えない。それどころか邪魔になってしまう可能性すらある。そんなことは分かっている。

 だがこれはそんな理屈で止められるような衝動ではなく、俺という存在の根幹にあるなにかがそこへ駆けつけろと訴え掛けてくる。

 その感覚がなんなのかは分からないがそれでも一つだけ分かることがあるとすれば、これに従わなければ後悔することになるだろうという絶対的な確信。

 だから俺はそこへと向かう。俺が自身のすべてを賭けても構わないと思えるほどに大事な存在がいるところへと。


 「おい! 待てってば、兄ちゃん! 一人で突っ走んなって!」


 そうして必死で走り続けていると、背後からカイルが大きな声で制止の呼び掛けをしながら追いついてくる。


 「力使えないんだろ? だったらあとは俺とクレアに任せて兄ちゃんはその補助に」

 「カイル! いいところにきた。少しの間でいい、あの白いやつの気を逸らしておいてくれ!」

 「は? え?」

 「頼んだぞ!」

 「あ、おう!」


 一方的にそれだけを告げ、呆けた表情を浮かべているカイルの背をリーダーのいる方向へと押し出してやると、よく分かっていないながらもいい返事をしてそちらへと全力で走り出す。


 「おらぁ! そこの白いやつ! 今から俺がお前の相手してやっからそこ動くんじゃねぇぞ!」


 クレアに集中していたリーダーは、挑発するように剣を振り回し、威勢のいい声を上げて向かってきているカイルの存在に今そこで初めて気づいたのか、邪魔者でも見るかのようにそちらを一瞥すると、自分の傍に置いていた二体の配下にカイルの相手をするように指示を出したようで、その二体がカイルの下へと向かい走り出した。

 それを横目にして、大量のワイルドボアを一人で相手取っているクレアの下へと急ぐ。カイルが作ってくれたこの隙を無駄にしないために。

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