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討伐86

 意を決してワイルドボアに向かい走り出す。

 今の俺ではあの勢いで走ってくるやつを仕留めることはできない。だから、狙うのは足。派手な一撃を決める必要はない。相手の動きを崩すための一撃さえ入れられればそれでいい。

 そのために、相手との距離がある程度まで近づいたところで地面を削るようにして足を止め、身を翻して真横へと走り出す。

 その後ろをワイルドボアも追い掛けてくるがその直後に再度足を止め、姿勢を低くして相手の足下へ飛び込むように跳躍する。

 それに対して少し面を食らったように表情を歪ませたワイルドボアだが、俺の動きが止まったことを好機と受け取ったようで、勢いをそのままに持ち上げた前足を叩きつけるように振り下ろしてきた。 


 「くっ!」


 重量級のそれが迫ってくる様に思わず大きく距離を取ってしまいそうになるが、必死に堪えてその軌道を読み取り身を捻るようにしてその位置から逃れると、それに合わせるようにして逆手に握ったナイフを繰り出し、相手が足を振り下ろす勢いを利用して足の側面を引き裂く。

 とんでもない手応えにナイフを握っていた腕がへし折れそうになるが、もう片方の手で手首の辺りを押さえることでそれに耐え、足の付け根まで引き裂いたところでその勢いは止まる。

 凄まじいほどの血液が大量に流れ出て俺の体を赤く染めていくが、それには目もくれずに魔力を高めると、痛みで悲鳴を上げて体勢を崩したワイルドボアの正面に立ち固く握った拳をその眼球へと叩き込む。

 柔らかな眼球はそれだけで簡単に潰れ、手首の先が眼窩に潜り込んだ。

 それに更なる痛みと不快感を覚えたのだろう。ワイルドボアは頭を左右に振って俺を引き剥がそうとしてくるが、牙を掴んで体を支え、握っていた拳を解くと相手の頭の内側で魔術を発動させる。


 「《ウインド》!!」


 風魔術を発動させた瞬間、吹き荒れた風はワイルドボアの頭内を無茶苦茶にかき回し、目や鼻、耳や口など顔に空いている穴という穴から血や体液、なにかの破片のようなものが噴き出してきた。

 それと共にワイルドボアの体は急激に力が抜けたように崩れ落ちる。


 「はぁ、はぁっ」


 息を切らして眼窩から手を引き抜き顔を上げると、カイルはすでに自分の相手を倒していたようで、片足を失った残りの二体に止めを刺しているところだった。

 やはりカイルも今の俺に比べれば相当に強いようで、一切息を切らすこともなく余裕の表情を浮かべていた。

 そうして、こちらの戦闘が終わったことでクレアの方へと視線を向けてみれば、リーダーの背後に控えていた配下が一斉にクレアへと襲い掛かっているところだった。

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