表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
422/644

討伐82

 『……うん!』

 「当たり前だろ、なんのためにここにきたと思ってんだ。兄ちゃんこそそんなボロボロでちゃんと戦えんのかよ?」

 「どうだろうな。でも、やらなきゃこっちが一方的にやられるだけだ。だったらやってやる。やってみせるさ」


 カイルがこちらを煽るようにして投げ掛けてきた確認に対し、掌に拳を打ちつけて軽く笑みを浮かべてそう答える。

 あいつらがこちらを見逃すつもりがない以上は、いずれどこかで決着はつけなくちゃいけないんだ。なら、リーダーであるあの個体が姿を現している今が絶好の機会と言ってもいいだろう。ここであいつの姿を見失えばまた同じように魔術で狙撃される可能性もあるし、俺にとってなによりも許し難いことをしたあいつだけは見逃すわけにはいかない。

 スキルは未だに使用可能状態になっていないが、それでもクレアとカイルがいるならばあいつの魔術を妨害することさえできれば十分に勝機はある。

 彼我の戦力差をそう判断して補助魔術を発動させるための魔力を高めていると、相手側から大きな笑い声が響いてきた。


 「はっはっは。なるほどなるほど。つまりお前たちはあの二体に追われて俺の下まで逃げてきたと、そういうわけか。くっくっく。相手が逃走するのを利用してこの場を突き止めるとは実にいい手を使うではないか。確かにそれならばこの地を理解していなくとも我々の下まで辿り着くのは容易だっただろうな」


 尚もおかしそうに笑い声を上げ続けるリーダーの言葉を聞いて、ようやく合点がいった。

 どうやってクレアとカイルがこの場にやってくることができたのかと思っていたがそういうことだったのか。


 「いやいや、笑わせてもらった。なに、そう怯える必要はない。俺は怒ってなどいないのだからな。それにだ、あの二人を見つける手間も省けたというもの。よくやったと褒めてやってもいいぐらいだ」


 上機嫌にリーダーがそう言うと、配下のワイルドボアたちは恐縮して頭を下げる。


 「ただし、逃げ帰ってきたというのは頂けないな。それに対しての罰は受けてもらおう。ふっ、殺したりはしないさ。そのように無用な殺生をするほど俺は馬鹿ではないつもりだからな。死ぬ時は意味のある死に方をさせてやる」


 そう言って、リーダーは口の端を持ち上げて笑みのような表情を作りこちらへと向き直り、そしてクレアへとその視線を合わせた。


 「では、罰を与える。命令だ、お前たちだけであの餓鬼を始末してみせろ。なにを怯えている? できないとは言わせないぞ。それがお前たちの罰であり、役目なのだからな。そら、なにをしている? 行け!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ