討伐75
「なに?」
「本当はいつだって動き出すことができたんだ。でも、あいにくと俺にはこの毒をどうにかする方法が思いつかなかった。だから、ずっと俺のことを見張ってたお前らがこうしてのこのこと出てくるのを待ってたんだよ」
「ほう。それで? 我々が出てきたからなんだというんだ? 先程も言ったが毒の治療法などに心当たりはないぞ」
とぼけるようにそう言ってくるワイルドボアの口元はまるで笑みを浮かべているかのように歪められていることから、本当は毒の治療法を知っているだろうことは明らかだ。
このような自然環境で生き残るためならその程度のことは知っていても当然といえば当然なんだろうが、それを俺に教える気は一切ないといったところか。
だが、正直そんなことはどうでもいい。
今毒の解除法を聞いていることはあくまでも俺が解毒薬を持っていることをこいつに悟らせないためであり、目的はこの状況を打破することだ。
「答えるつもりがないのならそれでもいいさ。それならそれで聞き出す方法なんていくらでもあるんだからな」
「どうするつもりだ?」
「本当は話し合いで済ませたかったんだが、そういうつもりなら実力行使でいかせてもらう。俺のことを見張っていたんなら当然知ってるはずだよな、俺の強さを。もし、毒の治療法を答えないっていうんならお前らをこの場で皆殺しにさせてもらうが、構わないな?」
嫌な笑みを消し、相手を睨みつけるように目を細め脅しの言葉を掛ける。
俺のことをなにも知らない相手ならばこんなことを言ったところで「なに言ってんだこいつ」としか思われないだろうが、少なくともこいつは俺がどれほど自分たちにとって脅威となるかを知っている。
だからこそ、ここで強気に出れば相手はそれを警戒して強行には出てこないはずだ。
「なるほどなるほど。そういうことならば是非ともやってみせてもらおうじゃないか皆殺しというやつを」
そう言うと、ワイルドボアのリーダーは土魔術を発動させ俺の手を貫いていた土槍を消し去る。
「……」
そのあまりにも予想外な反応に思考が停止し次の言葉が出てこない。
「どうした? 皆殺しにするんだろう? 枷も外してやったんだ。やれるものならやってみせてみろ。やれるものならな」
……こいつ、まさか。
「くっくっく。できないのだろう。あぁ、もちろん貴様の強さは知っていたさ。ずっと見ていたからな。そう最初の襲撃が失敗に終わったあの後からずっとな。だから知っているのさ、貴様の妙な力のこともな」
《限定解除》のことを知っている!?
「さぁ、やってみせろ!我が同胞を屠ったように!我らすべてを殺してみせろ!!」