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討伐74

 風の音、葉が揺れる音、獣の息づかい。

 周囲に意識を向けてみても聞こえてくるのはそれだけで、声のようなものは聞こえてこない。

 さっきのはやっぱり幻聴だったのか?

 ……うん、そうなのかもしれない。《思念会話》のように特定の相手にだけ声を届けられるような能力があるのならいざ知らず、さっきの声は耳から入ってきた音のようだったし、それならこのワイルドボアたちもなにかしらの反応を示しているはずだ。それがないということはそういうことなんだろう。

 僅かに見えた光明がただの幻だったということに気づき、意気消沈すると同時に逃れられない現実を改めて突きつけられたような気がしてそれが心に重くのしかかる。


 「まことに愚かなり」

 「!?」


 声だ。間違いない。今度は聞き間違えじゃない。確かに聞こえた。はっきりとこの耳に。

 だが、澄ましていた耳が捉えた声は、正面から聞こえた。そこにいるのは、白い毛のワイルドボア。

 そう、声が聞こえてきたのは間違いなくそちらからで、つまりこの声の主は──


 「この期に及んで無駄な抵抗を続けるとは、理解に苦しむというものだ」


 こいつだ。

 見た目に反してあまりにも流暢に言葉を操るものだから激しい違和感を覚えてしまうが、こちらに向けて疑問の声を投げ掛けてきているのはこいつだ。

 以前にも言葉を扱う魔物に遭遇したことはあるが、ここまではっきりとした言葉を話してはいなかった。上手く言葉を使うことができるということは、この魔物はあの時の魔物よりも知能が高いということであり、話が通じる可能性があるということだ。

 なら、交渉次第ではまだ生き残れる可能性があるということだ。


 「……まだ死にたくはないからな。抵抗するのは当然だろ?」

 「ほう、まだ会話をするだけの余裕は持ち合わせていたか。毒の進行が予想よりも遅いな。なにか対策でもしていたのか?」

 「対策なんてしていたわけないだろ。完全にしてやられたからな。気を抜いたら今すぐにでも気絶しそうなほど抜群に効いてるよ」


 言葉ではそう言いつつも、余裕を匂わせるようにして話を進める。


 「だから、今すぐにでもこの毒をどうにかしたいんだけど、治す方法とかって知らない? 知ってたら教えてほしいんだけど」

 「さて、心当たりはないな。それにだ、それを知ったところで貴様は毒の影響でそこから動けないのだから意味はないだろう」

 「まぁ、そうだな。でも、お前は俺が本当に動けないとでも思ってるのか?」


 口角を上げ、嫌な笑みを浮かべるようにして意味深な問い掛けをすることでなにかを隠しているように見せかける。

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