討伐55
『アスマ君?』
そうして、この数日間でのクレアの成長ぶりをしみじみと感じていると、俺が話し始めないことに疑問を覚えたのか、クレアがこちらを気に掛けるように名前を呼び掛けてきたので『悪い悪い』と謝罪をして、懸念していることについて話すことにしてみた。
『えっとな。今ここにいる三人についてなんだけど、こいつらをそっちに連れていくべきか、それともこのままここにいてもらうかのどっちかで迷ってるんだけど、どっちのほうがいいと思う?』
『……それって、魔術で狙い打ちされるのを避けるためにこっちに連れてくるよりはそこにいたほうが安全かもしれないっていう話?』
『ん? あぁ、うん、そう。こっちでも土槍の破片を飛ばすやつを使われたら危ないことに変わりないと思うけど、それでもこの馬車自体が遮蔽物になるだけそっちよりはましなのかなって。……よく今ので分かったな』
『えへへ』
照れ臭そうに笑ってみせるクレアだが、今の俺の言い方でよくそこまで理解できたもんだ。
正直、そこまで読みが鋭いと少し怖いんだけど。頭の中どんな構造になってるんだか。
『あ、それでアスマ君。リリアちゃんは今起きてるの? それとも気絶しちゃってる?』
『ん、リリアなら起きてるけど』
『分かった。それならそのままそこにいてもらったほうがいいと思う。そこなら《アースグレイブ》で攻撃することもできないし、リリアちゃんがいるなら自分たちを《アースウォール》で囲めば破片を飛ばされても大丈夫だと思うから』
『あー、なるほど。よく考えてみればそうだな』
自分では使えない魔術だからか、まるでその考えは思いつかなかった。
他人の魔術なのに、よくそんな簡単にあれこれと利用方法を思いつくもんだ。やっぱりすごいなクレア。
『よし、それならこっちの心配をする必要はもうなさそうだな』
『そうだね。相手がこれ以上こっちが知らない魔術を使ってこなければ、だけど』
『まぁなぁ。でも、それについては考えても意味がないからとりあえず警戒を強めておくことしかできないんだよな』
『うん。でも、次はもうないからここで終わらせなきゃ』
『あぁ、ここから反撃開始だ』
クレアの言った通り、次はもうない。
今回の攻撃は一応なんとか皆無事に乗り切ることができたが、次に同じような被害がでた場合は、回復薬の蓄え的にも、精神的にももう限界を迎えてしまうだろう。そうなれば、確実におしまいだ。
だから、ここからは警戒心を高めて慎重にいくのは大前提だが、それと同じぐらい即座に勝負を決める必要が出てきた。
だが、それぐらい分かりやすいほうがこっちもやりやすいというものだ。