表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
394/644

討伐54

 助けられたかもしれない命が目の前で散ってしまったわけだからそれも仕方のないことだろう。

 ただ、一つだけ確かに言えることがあるとすれば、それは決してユーリが悪いわけじゃないということだ。

 見ず知らずの他人を助けようとしたユーリの行為は、人によっては馬鹿なことをしたと思う者もいるだろうが、危険を顧みず他者のために尽くすことなんて誰にでもできることじゃない。

 自身にも被害が及ぶかもしれないという場面で咄嗟にその選択ができたことは素直にすごいと思えるし、尊敬に値するものだ。

 俺がその場にいたとしても、間違いなく逆の選択をしていただろうことは容易に想像できる。

 まぁ、それで瀕死の重傷を負ってしまったのは褒められたことではないが、全力で自分の意志に従ったその選択自体は間違いではなかったと思える。

 もし、なにも行動を起こさず見殺しにしていれば、その後悔は今よりももっと大きく心に深く刻まれていたことだろう。やらずに後悔するよりは、やって後悔するほうが気持ちとしては随分違ってくるはずだ。

 それに、自分に足りないものを発見することにも繋がるだろうしな。

 だけど、それをユーリに伝えるつもりはない。たぶん、今なにかを言ったところで、それが彼女に届くことはないと思うし、心の整理がつくまでは下手に声を掛けるよりはそっとしておいたほうがいいはずだ。

 なので、ひとまず小難しい思考は頭の隅へと追いやって、ユーリ、リリア、オリオンをクレアたちの下へと降ろしてやろうと考えたところで、一つの懸念が頭をよぎったので、ユーリに「ちょっとごめんな」と断りを入れて屋根の縁を覗き込みクレアの姿を見つけると、《思念会話》を発動させる。


 『クレア。ちょっといいか?』

 『アスマ君? どうしたの?』

 『あぁ。えっと、まずは朗報なんだけど、リリアとオリオン、それにユーリもとりあえずは無事だったよ。ユーリだけはちょっと怪我をしてたけど、シャーロット先生から貰った回復薬で治したから安心してくれ』

 『わぁ! やった! 本当だ、アスマ君の言った通りだった!』


 ……確かに言われてみればその通りだが、適当に言ったことが的中しただけなので素直には喜びづらいところがある。


 『お、おう。だろ? って、まぁそれはいいんだけど、ちょっと相談があってな。話を聞いてもらってもいいか?』

 『あ、うん。分かった、任せて』


 ……任せて、か。

 あのクレアがそんな風に言ってくるなんて……うん、なんか感慨深いな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ