討伐52
「ははっ、はははっ、よっしゃ!」
戻った。ユーリの意識が戻ってきた!
さすがはシャーロット印の回復薬だ。瀕死の重傷をあっさりと治すだけじゃなく、意識すらもこんなに早く回復させてくれるだなんて、すごい、すごすぎる。
今までにも散々お世話になってきた薬ではあるが、ここまでの薬効があったことに心底驚かされる。
こんなにすごい薬を祝いの品として二本も分け与えてくれたことに、感謝の言葉もない。
「……?」
「っと、あぁ、悪い一人で盛り上がって。でも、本当に嬉しくてさ。よかった、ユーリが無事で本当によかった、無事でいてくれてありがとう」
不思議な顔でこちらを見詰めていたユーリに、一人で感動に浸っていたことを詫びて、彼女の手を取って生きていてくれたことへの感謝を告げる。
その言葉を受けたユーリは、更に不思議そうに眉をひそめてこちらを見詰めてくるが、突如はっとしたような表情を浮かべると、ゆっくりとした動作で腕を動かし、腹部から胸の辺りを撫でるようにして探り、驚愕に染まった表情でこちらに強い視線を送ってくる。
「……傷……なんで?」
どうやら気を失う前の状況を思い出したようで、なんで傷がなくなっているのかと問い掛けてきているようだった。
「あぁ、傷ならこれで治したよ」
「……それ……回復……薬?」
「うん、回復薬。正直、半分ぐらいはもう駄目だと思ってたけど、効いてくれてよかったよ。あ、これの残り飲めるか?」
「……」
そう言って、二本目の回復薬の残りをユーリの前に差し出すが、彼女は少し嫌そうな表情を浮かべて僅かに首を左右に振ってみせた。
「ん? なんだ、飲みたくないって? ……あー、あれだぞ? ちょっと薬臭い感じはあるけど、別にまずかったりとかはしないぞ、これ。それに、一応見た目では傷が完治したようになってるけど、まだ油断はできない状態だから体力を回復させる意味でも飲んでおいた方がいいぞ? ほら」
ずいっと、顔の前に小瓶を突き出してやるが本当に飲みたくないのか、ユーリは口を閉ざしたままもう一度小さく首を振ってみせる。
なんでそこまで頑なに回復薬を飲むことを拒絶しているのかと頭を悩ますが、それらしい答えがみつかることもなくどうしたものかと考えていると、不意にユーリが口を開いて小さな声でなにかを呟いていた。
「……」
「え? あ、ごめん、聞こえなかった、もう一回言って」
「……それ……高い」
「高い? ……値段の話か?」
うん、というようにユーリは顎を引いて頷いているようにみせてくる。
なんだ、そんな理由か。まぁ、確かに値段はかなりの高額だが、一度栓を開けてしまった以上は早く消費しないと効能がどんどんと落ちていくので、できればこれだけでも飲んでほしい。
ということで、なんとか飲んでくれるように話を持っていってみせる。
「いや、これは貰い物だから別に値段は気にしなくても……いいとは言えないけど、リリアもクレアもお前のことすっごい心配してたぞ? だからさ、とりあえずあの二人を安心させるためにも念押しでこいつを飲んでおいてくれないか?」
「…………」
リリアとクレアの名前を出したことが功を奏したのか、それなりの時間を思案に費やした後に、ユーリは溜め息を一つ漏らして、回復薬を飲む決心をしてくれた。