討伐36
そうして難しい問題は丸投げにすることにし、途中休憩を挟みながらも日が傾き始めるまで訓練を続けると、夜には村長宅で振る舞われた様々な料理をありがたくいただき、その後は念のために交代で夜番をすることにした。
そして、魔物の襲来もなく無事に一晩を過ごしたことで今回の任務は終了ということになり、俺たちは神聖国からアルクスの街へと向かう乗り合い馬車に乗せてもらい帰還することになった。
「あー、終わった終わったー。今回は被害もなくて大成功だったな」
馬車が走り出して数分が経った頃、カイルが脱力するように背もたれに寄りかかりながら少し疲れたような声でそう漏らした。
なんだかんだと言っても気を抜けない時間が続いたことで疲労が溜まっていたんだろう、その横顔はどこか眠たげだ。
「本当にね。村の人たちも喜んでくれてたし、こんなに上手く任務をこなせたのは初めてだ」
「うんうん。やっぱり指示を出してくれる人がいると全然違うねー。まぁ、
アスマ君が聞いてた以上の人だったってこともあるけどねー」
「あー、そういやユーリって最初からある程度俺のことを知ってるみたいだったけど、こいつらから俺のことなんか聞いてたんだな」
というか、なんとなく話しやすいから普通に会話ができてたけど、ユーリとは昨日が初顔合わせだったんだよな。
俺にしては珍しいことだけど、なんだろう、あの普段はぼけっとした感じが俺的に親しみやすかったってことなのかな?
「うん。そこそこに強くて、そこそこに優しくて、そこそこに子供っぽいところがある人って聞いてたよー」
「なんだよそれ、説明になってなくないか?」
そこそこって、褒め言葉ではないよな? なんていうか特徴がなさすぎて適当に紹介されてた感が半端ないんだが。まぁ、実際俺にはそれほど特徴らしい特徴はないけどさ。
「うん。でも、強さに関してはそこそこなんてものじゃなかったよー。特に最後に見せてくれたあれ。時間の制限が厳しいって言ってたのはその通りだったけど、あそこまで強くなるのは予想外だったよー。正直、目で追うだけで精一杯なぐらいに速かったし、ほとんど一人で全部の魔物を倒してたもんねー」
まぁ、俺としてもあれは予想外だったけど、一応《限定解除》は俺の切り札だからな。数分程度しか効果が持たないんだからあれぐらいはできてくれないと俺が困る。
ただ、効果が切れる前にできるだけ多く敵を倒そうとして張り切った結果、十体ぐらいいたワイルドボアのうち七か八体は倒したからな。
直前に弱気な発言をしていたのはなんだったんだと思われても仕方ないだろう。
でも、比較する対象がいないと自分の力がどれだけ強くなっているかってことが正確には分からないからな。