討伐34
「いやー、まさかこんなにも早く魔物を倒してくれるなんて思っても見なかったよ。昨日ここにきてからまだ半日かそこらしか経ってないだろうに」
「へっ、まぁな。俺たちがその気になればざっとこんなもんだよ」
ワイルドボアのリーダーとその場にいた他の個体を全て討伐することに成功した俺たちは、証拠としてリーダーの死体を担いで村へと戻り、現在は村長宅の入り口にてその報告を済ませているところだ。
「こんなに優秀な子たちを送ってくれた冒険者ギルドには感謝しねぇとな。ありがてぇ」
「うんうん。あーでも、まだ全部の魔物を倒したかは分からないから様子見で今日一日はここに滞在させてもらうからさ、なんかあったら遠慮せずに言ってくれよな」
「あぁ、そん時は頼りにさせてもらうよ。あとそうだ、今夜は魔物を倒してくれたお礼にちょっとした料理を馳走するから、夜になったらまた家にきてくれ」
「別にそんな気を使ってくれなくてもいいのよ? 魔物から受けた被害でまだ色々と大変でしょうし」
せっかくの村長からの申し出ではあるが、リリアが言ったように今この村は暫定的に魔物の脅威が去ったとはいえ、それまでに受けた被害がなくなったわけではないので、その好意を受け入れるのは少し心苦しいものがある。
むしろ、俺が持ってきた非常食とか置いていこうかと、提案してもいいぐらいだと思っている。
「いや、実は昨日あんたたちが乗ってきた馬車にギルドからの救援物資がいくらか載っててな、あれのおかげでしばらくはどうにかなりそうなんだよ。そりゃ、物資をいたずらに浪費するのはよくないのは分かってるが、恩人たちになんの礼もしないままに帰すのはあんまりってもんだろ? だから、ここは素直にこっちの申し出を受け入れちゃくれねぇか?」
村長が僅かに頭を下げながら、そう言ってこちらに頼み込んでくる。
と言っても、今回の任務に対する依頼料はギルドに支払われているはずなのでそれ以上のものは不要なのだが、まぁ、確かに受けた恩に対してなにかを返したくなる気持ちは分からなくはないので、俺としては受け入れることに賛成という意志を込めて、こちらに視線を向けているリリアへ頷いてみせる。
他の皆も大体俺と同意見のようで、首を縦に振っている。
「……分かったわ。そう言われて断るのも失礼だし、ええ、ご馳走にならせてもらうわ」
「おお、そうかいそうかい。ありがとうな。それじゃ俺は準備のために行かせてもらうが、夜まで自由にしててくれ。まぁ、なんにもない村だがな」
「はっはっは」と大きな声で笑いながら去っていく村長の姿を見送り、なにをするにも一度血と汗を洗い流そうということになったので近くの川で水浴びを済ませ、その後、女の子たちが部屋へと戻りおしゃべりに興じる中、俺は野郎二人を引き連れて訓練をすることになった。