討伐32
『……ははっ。はっはっはっは!』
『うわっ!? えぇ、なんだよ急に笑い出したりして。俺たちなんか面白いことでも言ったか?』
『はははっ。いやいや、そういうわけじゃないって。ただなんていうかさ、お前らの言う通りだなって思っただけだよ。うん』
適材適所に互いを助け合い支え合うことができるのがパーティーを組むことの利点であり、本質なんだろうと思っている。
だから、俺がこいつらにあとを任せて後ろに下がらせてもらうことも悪いことではないんだろう。どころか、それが信頼関係を築いていくことに繋がっていくんだろう。
『当たり前のことを言っただけだと思うけど。まぁ、兄ちゃんのためになったんならよかったよ』
『おう、勉強になったよ。皆ありがとな。ってことで、クレア、合図頼む』
『もう大丈夫そう?』
クレアも俺が必要以上に気負っていることを感じていたのか、様子を窺うようにこちらを見上げてくる。
『あぁ、大丈夫だ。というか、無駄な力が抜けた分さっきまでよりも調子がいいぐらいだ。今ならなんだってやれそうな気がする』
『そっか。じゃあ、やるね』
クレアのその言葉に対して皆が口々に了承の返事をし、それを受け取ったクレアが魔具へと魔力を注ぎ、魔術を放つ準備を進める。
『クレア、カイル。二人は俺に追いつくことが目標だって言ってくれたよな。だからさ、それに応えるために今から俺は、今の俺ができる最高の力を見せるよ。どれぐらい二人の期待に添えるかは分からないけど、絶対に失望はさせないからしっかりと見ててくれ』
一方的に二人へそれだけを告げて、余計な考えを捨て去るために視線をワイルドボアのリーダーに固定し、集中力を高めていく。
ここから先に必要なのは、最適な行動を取るための直感力と判断力だけだ。それ以外はいらない。感覚に身を委ねるんだ。
感覚を研ぎ澄ませ、その瞬間がくるのを待ち続ける。
そして、魔術を発動させるための準備が完了したのか、クレアが一度こちらに視線を向けてきたので頷いてみせると、クレアも頷きを返し、魔具を嵌めた右腕を前方斜め上へと突き出すと、掌に光球が形成されていき、それが拳大の大きさになった瞬間、クレアは即座にそれを射出した。
放たれた光球は高速で一直線に魔物の上空まで飛翔すると、その場で爆裂四散し周囲へ猛烈な光を撒き散らす。
それと同時にカイルとユーリは茂みから飛び出し、ワイルドボアのリーダーに左右から挟撃を仕掛ける算段になっていたはずだが、そちらに視線を向けることもなく、俺は自身の切り札を発動させる。
『アクティブスキル《限定解除》発動』