討伐31
『は? なに言ってんだよ兄ちゃん』
不満を抱いているのがまざまざと伝わってくるように、カイルが思念でそう言ってくる。
まぁ、こんな保身に走った発言をしたんだ、「なに言ってんだ」って言われても仕方ないよな。俺の言ってることはそういうことなんだから。
『リーダーを倒すのは俺たち、いや、俺だからな。兄ちゃんは周りのやつらを倒したら全然下がってくれてもいいぜ』
『そうだねー。自分の役目が終わったら下がってもいいと思うよー。まぁ、リーダーはアスマ君に任せたいけどねー』
『……え?』
てっきり自分の発言を非難されるものだとばかり思っていたので、それとは真逆の言葉を掛けられて間の抜けた声を漏らしてしまう。
『っていうか、クレアもそうだけど、アスマ君もなんでそう自分が全部やらなきゃいけないみたいに考えてるの? 一応今私たちはパーティーなわけでしょ? なら、そんなに申し訳なさそうにしなくても戦えない状態になったら私たちに任せてくれたらいいのよ。私も魔力が切れたらほとんどなにもできなくなるけどあんまり気にしてないし』
『うん。僕も自分から攻めるのが得意じゃないから積極的に攻撃に参加できるわけじゃないし、役割を果たしたのなら後は仲間に頼ってもいんじゃない。そもそもパーティーってそういうものだよね?』
二人の言葉を聞いて、自分がどれだけ周りを頼りにしようとしていないことに気づかされて衝撃を受ける。
パーティーは信頼関係が大事だと頭の中では分かっていたのに、こいつらとは仮のパーティーを組んでいるだけだからと、その関係をないがしろにしていたのは俺自身だったんじゃないか。
結局俺は、自分よりも優れている者か、自分が大切に思っている者以外には信頼を預けようとはしていなかったということだ。
その傲慢な考えに気づかされ、その身勝手さを思い知らされ、自分の思考に嫌悪感を覚えると共に、笑いが込み上げてくる。
今から一番の役立たずになろうとしている自分自身のことを棚に上げて、信じてもいないくせに守ってもらおうだなんて、正真正銘の糞野郎じゃないか。
……ここでそれに気づけてよかった。
こんな馬鹿な考えを持ったまま、それに気づくことなく冒険者を続けていたら、きっとどこかで俺はなにかとんでもないことを仕出かして後悔することになっただろう。
それに気づかせてもらえただけでも、このパーティーと一緒に任務に就かせてもらったことに感謝したい。
考えを変えることはそう簡単なことじゃないけど、それでも変えていかないといけない。それが俺のような弱い人間には必要なことだから。