情報収集
「オークか。それはまた難儀な相手だね」
ギルドマスターの執務室に戻り目的地を聞いた後、家に帰った俺は早速ミリオにオークの情報について尋ねていた。
「あの魔物はとにかく厚い皮下脂肪が厄介なんだよ。生半可な攻撃じゃまずその脂肪を突破することができないし、剣の刃も脂肪の油に塗れると斬れ味が極端に落ちる。そのうえ脂肪部分を突破できたとしても硬い筋肉の層があるから、よっぽど上手く急所を一突きにでもしない限りアスマの武器じゃ厳しいかもしれないよ」
「…そりゃまた想像以上に面倒臭そうだな。ミリオはオークを倒す時ってどういう方法を使ってるんだ?」
「正直僕の戦闘方法はオークと相性が悪いから、罠を活用してるよ」
「へぇ。どんな?」
「えっと、言葉で説明すると少し長くなるんだけど」
「うん」
「まずアースピットで穴を作って、その中にアースグレイヴっていう槍のような形に硬く固めた土を地面から突き出す魔術があるんだけど、それを魔力操作で少し形状を変化させて一度刺さると抜けないように返しを付けておいて、見つからないように枝や葉っぱ、土なんかで隠しておく、そこにオークを誘導して落としたら水系統の魔術で穴を水没させて、最後にアースコントロールで蓋をすれば完了だよ」
「…うっわぁ、えげつな。何て罠を考えるんだよミリオ。ちょっと怖いわ」
「いや、僕の場合魔力強度の問題で徹底的にやらないと罠を破壊される可能性があるからね。無駄に必要な手順が多いからそう感じるだけだよ」
…いやぁ、うん、まぁ。本人がそう言ってるならこれは必要なことなんだろう。うん、間違いない。
「…あー、でもあれだな。俺、土系統の魔術使えないから同じ罠を試すのは無理だな。どうすっかな」
真面目な話本当にどうするかな。…刃物武器が通じないっていうならいっそのこと素手で殴り倒すか? できるかは知らんけど。
うーん、でも結局相手の強さがはっきりと分からない以上戦略なんて立てようがないんだよな。
こういう相手の場合は鈍器の方が有効なのかな? 筋力も大分上がったことだしそういう武器も一つは持っておいた方がいいのかもな。金が貯まったらそれも検討してみるか。
でも今は手持ちの手札だけでどうにかしなけりゃいけないからこうなったらもう実戦で一つずつ手を試していくしかないんだよな。まぁ、皮下脂肪が厚いってことだからなるべく脂肪の層が薄い場所を狙って攻撃するってことで。とりあえずそういう方向でいってみよう。
「ま、やれるだけやってみるしかないよな」
「ごめんね。あまりアドバイスあげられなくて」
「いや、いいっていいって。情報を教えてもらえただけでも上等だしな。何も知らないままなら速攻で武器を駄目にして動揺してただろうし」
「本当は僕も手伝ってあげたいところなんだけどね」
「一人で討伐するってのが条件だからな。まぁ、安心しとけってこれでも俺も相当強くなったんだからな。半年前とは別人だと思ってくれていいぜ」
「そっか。なら心配するだけ野暮ってやつなのかな」
「ははっ。あぁ、そうだな。明日オークを討伐すれば俺も冒険者になれるんだ。そしたらアンちゃんも誘ってさ、三人で一緒に任務受けようぜ」
「そうだね。それじゃ楽しみに待ってるよ」
「おう」
そうだ。これぐらいのことでいちいち躓いてなんていられないんだ。別に上級冒険者になりたいとかそんな目標があるわけじゃないけど、少なくとも中級ぐらいにはなってある程度の強さと金を手に入れたらこの世界の色んなところを見て回ってみたりはしてみたいし、色んな人たちも見てみたい。
そのための壁がこれだっていうんなら、それぐらい余裕で乗り越えてみせないとな。油断しないように気を付けよう。




