討伐28
「それで、私たちはどうすればいいの?」
カイル、ユーリがクレアからの指示を受けて準備を進める中、リリアとオリオンも自分たちがどう動くべきかを聞くためにクレアへと話し掛ける。
『リリアちゃんとオリオン君はここで待機していて、合図を出したら私と一緒に前に出て』
「ええ、分かったわ」
「うん、了解」
ここまでのクレアの指示が的確だったこともあって、二人は二つ返事で了承し、身を屈めながらもいつでも動き出せるような姿勢でその時を待っている。
『それで、最後にアスマ君。今からあの魔物の注意をできるだけ逸らすから、その瞬間であれを倒して。できれば、なんだけど』
そう言って、クレアは俺の意志を確かめるかのようにこちらの目を覗き込んでくる。
その真っ直ぐな視線を正面から受け止めて、でも、少し考えるように顎に手を当てて答える。
「できれば、か。どうだろうな。ここからあそこまではそこそこ距離があるし、相手がどんな手を持ってるのかも分かってないからな。絶対にできるとは言えないな」
あの魔物次第ではあるが、この距離なら木々の隙間を縫っての遠投では確実に止めを刺せるかどうかは微妙なところだ。
確実性を重視するのなら近接から渾身の一撃を叩き込むのが一番だろう。
それを決めるためには、注意を逸らしてもらった一瞬で相手との距離を詰めて、相手が未知の手札を切ってくる前にどうにかしなければならない。
当然それは簡単なことじゃない。あの魔物がただのワイルドボアだったのなら話は別だが、戦闘経験が豊富なのが見て取れる以上は生半可なやり方じゃ一撃で倒すことなんてできないだろう。
だから、本当に確実性を求めるのなら、それこそ先程のように時間を掛けて罠に嵌めるなりといった方法を取る方がいいのかもしれない。
でも──
「でも、クレアは俺にそれができると思ったからその作戦を立てたんだろ? なら、やるさ。完璧にはこなせないかもしれないし、確実性もないけど、クレアが信じてくれた俺ってやつの可能性を信じて全力でやってみるよ」
クレアの頭に手を乗せて、笑顔でそう答える。
それは、クレアの期待に応えるためでもあるが、それ以上に自分の意志を固めるために決意を言葉にして己を奮い立たせるために。
『……うん。信じてる』
その信頼に満ちた瞳に対して嘘をつかないためにも、全てを出し尽くして絶対に決めてみせる。