討伐24
そうして男三人と女の子一人でとりあえず穴の中へと死体を投げ捨て終わると、いつの間にやら山間から朝日が覗き始めていた。
「ふぅ、これで終わりっと。いや、これだけの数を被害も出さずによく倒せたもんだな」
「うん。僕も正直もう少し苦戦するかと思ってたけど、案外どうにかなるものだね」
額の汗を拭いながら独り言のようにそう漏らすと、オリオンが相槌を返してくる。
「や、こんなもんだろ。俺たちだけでも余裕だったけど、兄ちゃんたちまでいたんだぜ? これぐらい当然だって」
「ばーか。私たちだけじゃこんなに上手くいくわけないでしょ。勝てたかもしれないけど、絶対村がめちゃくちゃになってたわよ」
「そうだねー。リリアが火をつけて大炎上になってたかもねー」
「はぁ? そんなわけ……ない、と思いたいわね」
リリアは今までの所業を思い出しでもしたのか、尻すぼみに言葉が弱くなり「ない」とは言い切れないようだった。
『……でも……リリアちゃんがいなかったらここまで簡単にはいかなかったから……皆がこうして怪我をしなかったのもリリアちゃんのおかげだよ……ありがとうリリアちゃん』
そんなリリアを見かねてかクレアが今回の彼女の活躍を褒めて礼を言うと、リリアは小走りでクレアに走り寄り、がっしりと抱きついて肩口に顔を埋めている。
「うわ~ん。もぉ私の味方はクレアだけだよ~。ねぇ、私の妹になる気ない? 一緒にパーティー組みましょう」
「だから、勝手にパーティーに誘うなって言ってんのに。妹うんぬんは好きにすればいいと思うけど」
引き抜きは断固反対させてもらうけど、個人的な関係については特に俺からなにかを言うことはしない。
クレアは優しいから妹に欲しいっていうリリアの気持ちは分かるからな。
「あんまり甘やかしちゃ駄目だよクレアー。リリアは褒めすぎるとカイルみたいに調子に乗っちゃうから適度に落とすぐらいに扱わないと、また同じ失敗するからねー」
「なんでそこで俺の名前が出てくんだよ。俺、そこまで酷くないぞ?」
「いや、酷いでしょ。って、これと同じ扱いは本当にあり得ないんだけど!止めてよね」
「はいはい。どっちもどっちってねー」
どんどんとわちゃわちゃが酷くなってきたので、そろそろその騒ぎを止めようと思いオリオンに視線を向けるが、オリオンは朝日を眺めて一人現実逃避をしていた。
いや、なに一人で楽になろうとしてんだよ。させねぇよ。お前もこれをなんとかするの手伝えよ。
それから、オリオンを現実に引き戻してその騒ぎを止めた頃には、すでに朝と呼んでも差し支えない程度には日が昇っていた。
……なんか無駄に疲れた。