討伐17
そうしてクレアと話をしているうちに村人が共同で所有しているらしい薪小屋──小屋というには大きい建物──にやってきたので、隅に置いてあった荷車に必要な分の薪を載せ、それを引いてカイルたちの下へと戻った。
「で、こいつはどの辺りで焼くんだ?」
『……えっと……その辺りなんだけど……アスマ君とオリオン君……そこでその魔物の両脇を抱えて持ち上げてもらってもいい?』
皆と合流した後、クレアに次の指示を仰ぐとそのように言われたので、オリオンと力を合わせてそれを持ち上げるとクレアは頷いて次にリリアへと視線を向けた。
『……じゃあリリアちゃん……土魔術であの魔物をあの場所で串刺しにしてもらってもいい?』
「え? えっと、串刺し?」
『……うん……あれが倒れないように……お尻から頭まで……魔力が足りるならだけど』
「いや、魔力はまだ大丈夫だけど、結構えげつないことさせるわねあんた」
リリアは少々げんなりとしつつも、「まぁいいけど」と言ってこちらに歩み寄ってくる。
そして、魔物の真下へ手を向け魔力を操作し土系魔術の《アースグレイブ》を発動させた。
その瞬間、地面から勢いよく競り上がってきた円錐形の鋭い土槍が魔物の股間部分に突き刺さり、腕に感じていた重量が消え去ると共に一直線にその肉体を突き破ってその場で串刺しにした。
「おっと。うわぁ、間近で見ると本当にとんでもない絵面だな、これ」
「うん。というか、さっきも目の前でこれをやられたけど、手違いで僕に突き刺さらなくてよかったよ」
「……そんなへまするわけないでしょ。どう、クレア。こんな感じでいい?」
すでにそれなりの魔力を消費していたうえで更に魔術を行使したことで、より一層だるそうな雰囲気を漂わせてリリアがそう言う。
『……うんばっちり……ありがとうリリアちゃん』
口を開くのも億劫なのか、クレアのお礼にいいわよという風に手を振って応えると、リリアは近くに置いてある荷車に腰掛けて動かなくなった。
「あー、お疲れだな。俺が土魔術を使えるなら少しは手伝えたんだけど、使えないからな。お前らは?」
「俺も使えないんだよなぁ。っていうか、土はリリア以外使えないんだよ」
「あ、そうなんだ。土魔術って使い勝手がいいから一人だけしか使えないと負担が集中しちゃってなんか悪い感じがしてくるな」
魔物の死体を埋めたりとか、落とし穴を作ったりだとか、土壁を作ったりそれで階段を作ったりなんかもできるしな。
まぁ、それぞれに長所短所はあるからどれが一番優れてるとかは決められないけど、ミリオとかも結構普段から使ってるから正直羨ましいんだよな。
「まー、リリアは魔術師だからそっち方面で負担が掛かっちゃうのは仕方ないよねー。レベルが上がれば魔力も増えるからそれまでは我慢だねー」
「いや、他人事みたいに言ってるけどユーリも魔術師だろ?」
「私とリリアじゃ分野が違うからねー、私補助担当、リリア攻撃担当。私の魔術は次の戦いまでお預けだよー」
ま、そうなんだけどな。でもさっきの戦いの時は相手に察知されないように魔術を使わなかったから早くユーリの魔術も見てみたいんだよな。
付与は使えないけど補助と回復は俺も使えるし、参考にはなるだろうからな。
「そんなことより次の準備進めたほうがいいんじゃないのー」
「ん、そうだな。えっと、こいつの周りに薪を並べればいいか?」
『……うん……そうだね』
「うし、じゃあやるか」