討伐15
「っと、あった、あれだ」
先程から見えてはいたが、変になってしまった空気を入れ換えるため視線の先にある魔物の死体へと注目を向けさせると、オリオンも「あ、本当だ」という風に、それに便乗してきた。
「二体居るって話だったけど、もう一体は?」
「あぁ、もう一体は向こうにある。なんで、そいつを先に運んでいってもらってもいいか? 俺はあっちのを運んでいくから」
「あ、うん。了解」
そう言ってオリオンはワイルドボアの後ろ足を掴むと、それを引きずって元居た場所へと引き返していく。
結構な重量があるだろうから、もしかしたら一人じゃ運べないかもしれないと思っていたが、どうやら問題はなさそうなので俺も別個体の場所へと向かうことにした。
そして、止めを刺してそのままにしてあったもう一つの死体を引きずってクレアたちの元に戻ると、森と村の境目に等間隔に魔物の死体が並べられていた。何をやってるんだ?
その様子を訝しんで見ていると、引きずり音でこちらに気づいたのかクレアが控えめに手を上げて迎えてくれた。
『……おかえりアスマ君』
「おう、ただいま。なにやってんの、これ?」
その場にある複数体の死骸を指差してそう聞いてみる。
『……これは……魔物除けだよ』
「なにそれ? なんのためにそんなことしてんの?」
『……えっと……今から森の中に居るワイルドボアを……誘き寄せるようと思ってるんだけど……その時に他の魔物も集まってくるかもしれないから……こうして魔物の死体を置いておくことで……ここにはこれだけのことができる相手がいるってことを教えて……それ以上は近づけさせないようにしてるの』
「あぁ、なるほどな」
そういえば害獣対策かなんかで、獣の死体かそれに似た模型をその場所に吊るすのが効果的だとかって聞いたことがあるけど、要はそういうことなんだろう。
「あ、でもそれならワイルドボアもこれを見たら警戒して逃げていくんじゃないか?」
『……一体とか……二体なら逃げていくと思うけど……この魔物たちは群れで行動してるって言ってたから……たぶんこれを見たら……仲間を連れて攻めてくると思うの』
「あー、そういう考えか。でも、一気に大量の数が攻め込んできたら俺たちだけじゃ手に終えないと思うけど、その対策もあるのか?」
『……うん……見ただけじゃ分からないと思うけど……その死体の手前に……リリアちゃんに頼んで落とし穴を作ってもらってるから……相手が数に頼って慎重さを忘れて攻めてきたら……後ろに回られるようなこともないし……大体は落ちてくれると思うよ』
そう言われてリリアの方を見てみれば、それなりの魔力を消耗したせいか少し気だるげな様子でユーリの背中にもたれ掛かっている姿があった。
まぁ、この作戦が上手くいくのならリリアは積極的に攻め手に回らなくても問題ないので後は休んでもらっていても大丈夫だろうからそれはいい。
でも、さっき少し考えただけでそこまでの策を思いつくなんてすごいなクレア。
となると、残すはそいつらを誘き寄せる方法だけど、それはどうするんだろう?