討伐12
状況を飲み込めていないクレアは、カイルからいきなりそんなことを言われて目を丸くしていたが、リリアからその肩に手を置いて苦笑い混じりに「気にしなくてもいいわよ」と言われると、首を傾げながらも一応の納得をみせていた。
「さて、それじゃあ皆揃ったところで次にどうするかってことを決めましょうか」
話の流れを変えるようにリリアが少し大きめの声でそういうと、誰も特に異論はないようで口々に肯定の返事をしてみせる。
「えーっと、そうね、まずは……どうしましょうか」
「……えー、言い出しっぺなのにいきなり人任せなのー?」
「いや、考えてみたらそもそも私ってそういう提案出すの苦手なのよね。ってことで、アスマ君よろしく」
「そこで俺に振ってくるかよ」
てっきり仕切ってくれるものだとばっかり思ってたのに、丸投げしてくるとはさすがに予想外だったよ。
「まぁいいけど。それじゃあ、一旦この死体の処理でもするか。ただ、方法をどうするかなんだよな」
これだけの大きさがある計七体もの死体を処理するとなると、焼くにしても埋めるにしてもそれなりの労力が必要になってくる。
リリアに魔術でやってもらうのが一番手っ取り早くはあるんだけど、あと何体の魔物がいるのかも分かっていない状況でいたずらに魔力を消費させるのも考えものだし、手作業でやるとなるとって感じで思考が一周してしまう。
……とりあえず一ヶ所にまとめておいて、朝になったら住人たちの手を借りて穴でも掘ってもらうのがいいかな? うん、そうするか。
「よし、じゃあ」
『……あの……アスマ君』
自分の考えを皆に伝えようとした直後、隣にやってきていたクレアから声が掛けられた。
「ん? どうしたクレア」
『……えっとね……少し試してみたいことがあるんだけど……いい?』
「へぇ。あぁ、なんかいい考えが浮かんだんなら言ってくれると助かる」
クレアがこうして積極的に意見を出してくれることは珍しいので、それを嬉しく思いどうぞどうぞとばかりに提案者の立場を譲る。
『……それじゃあ……まずは倒した魔物の死体を一ヶ所に集めてほしいんだけど……アスマ君が倒した魔物ってまだ向こうにあるの?』
「あぁ、向こうに二体分あるな。こっちに運んでくればいいか?」
『……うん……お願い』
「あいよ。じゃあ、オリオン手伝ってもらってもいいか?」
「え、僕? あ、うん。分かったよ」
自分が選ばれたことに少し意外そうな顔をみせるオリオンだったが、すぐに肯定の返事をしてこちらに向かってきてくれた。
まぁ、正直ついてきてもらうのはカイルでもよかったんだが、俺がここを離れている間になにかあった場合にあいつが残ってくれていると少しは安心できる。
オリオンも盾役としては優秀だが、対応力ではやっぱりカイルのほうが優れてるからな。
それに、この任務が終わったあとに盾の扱いを教えてもらいたいからその話をしておきたかったっていうのもあるしな。