討伐5
クレアは全員の顔を流すように見て、誰からも異論の声は上がらないのを確認すると一度頷いてその内容を話し始める。
『まずなんだけど、私とアスマ君は皆と一緒に戦ったことがないから無理に連係を取るよりも私たちとカイル君たちで別れて戦ったほうがいいと思うの』
まぁ、確かにそれはその通りだ。
正直、お互いの動きを把握していない者同士が連係を取ろうとするのは意味がないどころか、互いの邪魔になってしまう可能性が高い。
よほどの実力差があれば、強いほうがもう一方に合わせることもできるのかもしれないが、技術的に足りていないところだらけの俺にはできるわけもないことだ。
『それで、四体いる魔物のうち二体をこっちで倒すから、カイル君たちには残りの二体をお願いしたいんだけど、いい?』
『え? いや、別にそれでもいいけど、こっちは四人で二体なのにそっちは二人で二体を相手にするって? 大丈夫なのか?』
カイルが心配するようにクレアへと問い掛けるが、クレアは問題ないとばかりに力強く頷いてみせる。
『うん、大丈夫だよ。だって、アスマ君がいるから』
クレアは笑みを浮かべて、俺に全幅の信頼を寄せるようにそう言い切る。
……そうして俺のことを頼りにしてくれるのは男として嬉しく思うんだけど、ちょっと信頼が厚すぎないですかね? 俺そんなになんでも期待に応えられるほどすごい人間じゃないんだけど。
『まぁ、そうだな。兄ちゃんがいるならなんとかなるか』
なんでお前までそんなよいしょしてくるんだよ。やめてくれよ、恥ずかしいから。
『あの、二体の魔物をこっちで倒すってことは分かったんだけど、それで僕たちはどう動けばいいのかな?』
オリオンが手を上げてクレアに行動の詳細を求めて質問を投げ掛ける。
『えっとね、まず最初にアスマ君に相手の正面から近づいていってほしいの』
『……え? 正面から?』
『うん。そしたらたぶん一番近くにいる魔物がアスマ君に目掛けて走ってくるから、それをどうにかしてこっちに飛ばしてきて』
『飛ばす。方法はなんでもいいのか?』
『うん、なんでもいいよ』
『そうか。ん、分かった』
まぁ、よくは分かってはないけど、とりあえず突っ込んできたワイルドボアをなんとかしてクレアのいるところにぶっ飛ばせばいいってことだろ? うん。
『そうしたら、あとの三体もこっちに向かってくると思うから、一体をアスマ君が倒して、一体をカイル君とユーリちゃんで 足を斬ったりして動きを止めてから倒して、最後の一体の動きをオリオン君が止めてリリアちゃんが倒して。あ、火を使うとオリオン君が燃えちゃうかもしれないから、使うのは土の魔術がいいと思うよ』
一息にそう言って、クレアは満足気に息をついた。
正直なところ、クレアの立てた作戦の内容は、要所にたぶんや、思う、といった予測で語っているようなものではあったが、それにしてはやけにすらすらとその内容を話していたことからクレアの中ではもうすでに決着までの筋道が見えているんだろう。俺と戦った時のように……。