討伐4
急に声を掛けられたことでびっくりして心臓が止まるかと思ったが、内心の動揺を悟られないようにしつつも、敵にこちらの存在を感知されないようにクレアたちの動きを手で制し、鼻の前に指を当てることで声も出さないようにと簡易的な指示を出す。
それである程度こちらの意図を察してくれたようで、皆が頷いていたがそれだけでは完全に状況を伝えきることはできないので、《思念会話》を発動させて全員との間に繋がりを形成して話し掛ける。
『さっき警告の鐘を鳴らしたばっかりだってのに、随分早い到着だな』
『いや、いつでも出られるように装備は着けたまま休んでたからな。まぁ、こんなにすぐ呼び出されることになるとは思ってなかったけど』
『ははっ、でもいいところにきてくれたな。助かるよ』
『うん。で、その向こうにいんの? 魔物』
カイルが表情を引き締めてこちらにそう問い掛けてきたので、首肯すると共に答える。
『あぁ、四体いる』
『えっ、そんなにいるの? それ、私たちだけで倒せるの?』
『大丈夫。それほど大したことはないからこれだけの人数がいれば問題ないよ』
『いや、大したことないって、それアスマ君基準でしょ? 私たちからしたら大したことあるかもしれないじゃない』
リリアがそう言って訝しげな表情をこちらへ向けてくるが、以前訓練を共にしたことがあるのでこの子たちの実力はある程度は知っているし、あの時から結構な月日も経っているので今の実力はそれ以上のものになっているはずだ。
なら、なにも問題はない。油断さえしなければ完全に抑えきることが可能だろう。
『ちゃんとそれを見越したうえで言ってるんだよ。お前たちの実力なら大丈夫だ。気を抜かなければな』
『……そ。ならいいわ』
『それで、僕たちはどうすればいいのかな? なにか作戦はあるの?』
『ん? いや、ないけど』
『……えぇ。ないの?』
『うん、ない』
オリオンがどこか拍子抜けしたような声を漏らすが、そもそも俺ってそういうのを作戦とかを考えられるようなタイプの人間じゃないんだよな。
自分だけなら相手がこう動いたらこう動くっていう予測を立てたりはするけど、他の人にまで細かい指示を出したりするのはできない。
『別に特殊なことをしてくるような相手じゃないし、その場その場で臨機応変に対処する。ってことじゃ駄目か?』
『駄目、じゃないけど。できればもう少し具体的な指示がほしいかなって』
『うーん……あ。そうだ、ならクレアに頼もう』
『え? 私?』
突然話を振られたクレアは、きょとんとして首を傾げている。
『うん。昨日の感じからしてミリオ並みにそういうのを組み立てるの得意だろ? あの魔物の動きはさっき見てただろうし、この戦力で周りに被害を与えずに倒す方法なにか思いつかないか?』
正直、ちょっと無茶振りをしすぎたかな、と思わなくもなかったが、クレアは口元に手を当てて考える素振りを見せる。
『えっと……。ないことも、ないよ』
『え、まじで?』
『うん。上手くいくかは分からないけど』
『いや、それでいいよ。なんの策もないよりは断然いい』
『そっか。うん、じゃあ話すね』