勝負7
受け止め、受け流し、弾き、押し返す。
無数に存在する選択肢の中から次の行動に繋げるための最適解を導き出せるように、頭を高速で回転させながらクレアの連撃を捌いていく。
ただ、やはりというべきか打ち合いを続けるごとに少しずつクレアの剣がこちらの予測を上回り始める。
依然として視線などから読み取れる情報に変わりはないのだが、動きに緩急がまじり、更に剣だけではなく時折蹴撃を打ち込んでくることでこちらの予測を崩しに掛かってきた。
それが狙ってのことなのか、それとも偶然この結果に繋がったのかは分からないが、行動のパターンが増えればそれだけ的を絞るのが困難になるので厄介なことに違いはない。
それを踏まえたうえで、こちらもその行動の先の動きを読み取っていく。
そうして集中力を限界まで高め全開で思考を巡らせていると、不意に頭の中に声が響いた。
『スキル取得条件を満たしました。スキル《行動予測》を取得』
それは、俺が勝手にガイドさんと呼んでいるものからのスキル取得の際に届く音声メッセージのようなものだ。
どうやら今の攻防の中でスキルの取得条件を満たしたようで、新たなスキルを獲得したようだ。《行動予測》というスキルのようだが、それは言葉通りそのままの意味を持つスキルなのか、それとも少し違うものなのか。
と、そこまで考えたところで、そんなことを考えている暇などはないということを思い出し逸れた意識を戻すが、一瞬の遅れが致命的となりクレアの挙動を読むための時間はすでになくなってしまっている。
「しまった」という気持ちを胸に抱くが、それよりも今は次にくる攻撃を捌くことが先決だということでクレアへと全意識を集中させる。
すると、下段からこちらへと伸びてくる線のようなものが意識の中に浮かび上がり、咄嗟に盾を構えてみればそこへクレアの蹴りが打ち込まれた。
「っ!?」
受け止めた側の俺が驚くというのもおかしな話ではあるが、実際にかなり驚いたのだから仕方がないだろう。
意識上に浮かんだ線にどこか危ういものを感じたので思わずといった感じに盾を出してみれば、クレアの攻撃を防ぐことができたんだから。
そうして俺が驚いている間にもクレアの動きは止まらず、次の攻撃が繰り出される前にまた先程と同様に線のようなものを幻視したので、そこへ盾を構えるとまたしても容易に攻撃を防ぐことができた。
……あー、そういう能力か。
二度続けばさすがに理解できる。つまりは、これが先程取得したスキル《行動予測》の効果なんだろう。
たぶんだが、対象としたものの次の行動を予測して相手がそれに移る前にこちらへそれを感知させるというものだ。
それだけがこのスキルの効果なのかは分からないが、とりあえずそういう類の能力だということは間違いないだろう。
予測というよりも、かなり限定された予知にも思える。
ある意味で《危険察知》と被るようなところはあるが、あれは俺の脅威となる攻撃に対してしか効果を発揮しないので同じというわけではない。これは使えそうだな。