勝負6
そこからの攻防は、それまでよりも遥かに激しさを増して繰り広げられた。
クレアが攻め、俺が守る。ただそれだけの単純なせめぎ合いを続けてどれほどの時間が経っただろうか。
お互いに息は荒くなり、体力もかなり消耗しているため最初に比べると瞬発力は目に見えて落ちている。
だが、それとは裏腹に互いの技の冴えはここへきて更に成長し続けている。
そう、クレアだけじゃなく俺の技量もだ。
一進一退の攻防の中、圧倒的に不利なのは常に防戦を強いられている俺であることは言うまでもないことだ。
時間を追うごとにクレアは俺の戦闘技術を自分のものとして吸収し、自分の戦闘スタイルと組み合わせて全く新しい形へと昇華させていく様は、見ていて思わず笑ってしまう程の成長力だった。さすがにここまであっさりと自分のものにしてしまうというのは予想外もいいところだ。
それにより徐々に劣勢に立たされることになった俺が取れる選択肢などそう多くはない。だから、俺はクレアの次の行動を予測することにした。
今クレアが見せている戦闘技術は、元を辿れば俺が持っていたものだ。
なら、それを元に仮定を組み立てる。
俺なら次にどう動くかを予測し、目線や剣の握り、踏み込む足の深さ、それらを組み合わせクレアが動くと同時にこちらも動き、放たれた攻撃を絶妙なタイミングで弾き飛ばす。
『……っ!?』
予測は的中し、クレアの剣を腕ごと真横に弾くことに成功する。
そして、追い詰めていたはずの俺から突然攻撃を弾かれたことに面を食らったクレアは、二撃目を放つのを中断し短く後ろへと跳躍すると、動揺をかき消すためか息を整えるように何度か深く呼吸を繰り返していた。
その間に俺も乱れていた息を整え、額に浮かんだ汗の玉を強引に拭い去る。
クレアは視線の動きなど細かい部分に関しての技術はまだ自分のものにできてはいないようで、そこを読むことで何とか予測を的中させ一息つくことができたが、これがいつまでも通用するとは思えない。
だから、根本的にこの状況を打破するためには俺ももっと精度を高めていかなくてはいけない。一振り一振りに集中しろ。剣閃が見えないわけでも、動きが捉えられないわけでもないんだ。
なら、あと足りていないのは瞬間瞬間に対応するための力と反応速度だけだ。
限定的な行動しか取れない状況で、どんどん強くなっていく相手との戦闘経験を積めるこの戦いは思っていたよりも有意義なものだったようだ。