表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
325/644

勝負5

 「それはまた、とんでもないな」


 実際にそのクレアの言葉通り結果を見せられた以上は、それが本当のことだというのは明白だろう。

 でも、そうなると今後クレアは、自分が努力を積み重ねれば積み重ねるほど、俺が努力を積み重ねれば積み重ねるほど戦闘技術が加速度的に向上し、更に魔物との戦闘を重ねればレベルも常人の倍の速度で上昇していくということなんだろう。

 当初はレベルが急上昇することで戦闘経験が他の者に比べて半減してしまうことを憂えていたが、その辺りの経験もすべてが俺と共有化されているのだとすれば、そういった問題もまるで問題にはならないことになる。

 ……これは、本当にとんでもないことだぞ。というか、ミリオはこれに薄々気づいていたから俺にクレアと直接戦わせることでクレアの成長を更に加速させようって魂胆だったのか。

 やり方はともかくとして、それがクレアの戦闘能力を高め、生存力を高めることに繋がるのだから俺としても反対する気はない。さすがはミリオさん、どこまでも合理的なやつだ。そういう考え方は嫌いじゃない。


 『……でも……私にはアスマ君みたいなスキルなんてないから……完全には……自分の中に浮かび上がってくるアスマ君みたいな……動きを真似するのは無理なの……だからやっぱり……まだまだアスマ君には追いつけないけど……それでも……私は追いつかなきゃ駄目だから……だから……この勝負に勝つよ……絶対に!』


 その瞳に決意を宿して、再度の攻戦に身を投じるクレア。

 ここへ来る前にクレアは俺に対して、無意識の中に俺が持ってしまっている《弱いクレア》の想像を斬り捨てると言った。

 クレアのことを軽く見ていたつもりはなかったが、実際にクレア自身がそう感じていたのだとすればそう見てしまっていたのなもしれないという思いと、状況に流されて乗り気ではなかったがこの勝負を受けることになった。

 正直なところ、勝負が始まった時にはこの戦いで俺の意識に変化が訪れるような展開になると思っていなかったが、今はそれに期待している自分がいることに気づく。

 俺としても、たとえ無意識であろうとも誰かを見下すような真似をしているのがいいことだとは考えていない。それがクレアのことならば尚更に。

 だから、クレアがこの戦いで俺の想定を上回る成長を見せ、俺の抱えているその傲慢を断ち切ってくれるのだとすれば、それは願ってもないことだ。

 そのためにも俺は、ここからは先程まで以上に気合いを入れて、本気で勝負に挑ませてもらうことに決めた。

 それがクレアの成長と、俺自身の成長に繋がると信じて。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ