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勝負4

 片膝をついた状態で勢いの乗った上段からの斬り下ろしを盾で受け止めると、そこを支点として体を回転させて俺の頭上へと踵を振り下ろしてくる。

 すんでのところでその間に腕を差し込みそれを受け止め、力任せに振り払うことでようやく距離を開かせることができ、状況を仕切り直すことができた。


 「……ふぅぅ」


 肺に溜まった空気を吐き出すと、こめかみの辺りから一筋の冷や汗が流れ落ちてくる。

 ……今のは割と危なかったな。

 《危険察知》が働かなかった以上は、直撃をもらったところで大したダメージにはならなかったのだろうが、それでも一撃は一撃だ。それを受けた時点で俺の負けとなる。

 正直に言ってしまえば、この勝負は勝とうが負けようが俺としてはどちらでも構わないんだが、それとは別に確かめなければいけないことができてしまったので、その事実を確認するためにクレアへと話し掛ける。


 「なぁクレア。今の体術、誰から教えてもらったんだ? あれってゲインさんの、というか俺の戦い方そのものだよな? でも、俺の覚えてる限りでは俺もゲインさんも、それにミリオもクレアに本格的に体術を教えてはいないはずだよな?」


 見様見真似でやったのだとしても、それにしては動きに一切無駄なところがなく迷いもなかった。いくらなんでも完成度が高すぎる。

 確かにクレアは魔力操作に関しては飛び抜けた素養を持ってはいるが、近接戦闘の方にはそれほどの才覚は発揮していなかったはずだ。カイルはその辺りがかなり優れていたが、クレアは精々が並みといったところだろう。

 そのクレアが見せたあの動きは、俺がゲインさんに教わりそれなりの月日を費やすことでようやく習得することができたあの動きに酷似している。

 そしてその前に見せた連撃も、武器は違えど相手の隙を突いて徐々に追い込んでいくあの戦闘技術は、これまでに俺が身につけてきたそれにそっくりだ。それが意味するところは……。


 『……うん……誰かに教えてもらったわけじゃないよ……たぶんなんだけど……私がこんな風に戦えてるのは……前にアスマ君が言ってた……《成長因子》っていうスキルの影響なんじゃないかなって……思うの』

 「……あれか」


 《成長因子》。自身の経験を他者と共有するスキル。

 以前のレベル上げの時に、クレアのレベルが予想していたよりも大きく上昇したことから俺が魔物と戦った時に得た経験値をクレアに分け与えているのではないかと考察したことがあったが、経験という言葉の中には技術的な経験すらも含まれていたということか?


 『……うん……少し前から戦ってる時に……違和感みたいなのは感じてたの……誰かに言われたわけでもないのに……どう動いたらいいのかが勝手に頭の中に浮かんできて……その通りに体を動かしたら……なんだか全部上手くいって……今もそうしたら……なんだかアスマ君みたいな戦い方ができるようになってきたの』

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