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準備8

 『……そっか……そんな風に思い詰めちゃってたんだ……ごめんね……それって私が弱いせいだよね』

 「いや、クレアのせいじゃない。こうやってうじうじと悩んでるのも結局は俺が弱いからなんだよ。クレアを守りたいって強い気持ちはあるのに、そのための実力が伴ってないからいつまで経っても自信を持つことができないんだ」


 自信がないからこそ卑屈な考えが先行して浮かび上がってくるし、常にどこかで不安を感じている節がある。

 だからこそ、危険に対して及び腰になって後手に回った挙げ句に自分と仲間たちを余計に悪い状況へ追い込んでしまうという、たちの悪い流れを作ってしまいかねない可能性も孕んでいる。

 指示をもらえるのならばそれに従って動いていればいいだけだから気楽でいられるが、自分で考えて行動に移すとなるとそこに発生する責任に押し潰されそうになるところもまた駄目なところだ。本当に救いようのない人間だ、俺は。


 『……ねぇアスマ君』

 「ん?」

 『……アスマ君前に言ってたよね……二人で一緒に強くなろうって……自分が駄目になりそうな時……折れそうな時は私に支えてほしいって』

 「……あぁ」


 確かにそう言った記憶はある。

 俺は弱いから、何か心の支えになるようなものがないとすぐに潰れてしまいかねないから、だからその役目を俺はクレアへ求めた。


 『……じゃあ何で……そうやって一人で全部抱え込んで……苦しそうにしてるの?』

 「!?」


 それは完全に俺の図星をつく一言だった。

 俺はクレアにそう言って、心の拠りどころになってもらったはずなのに、気がつけばいつのまにかそこへ縋ることを忘れてしまっていた。

 大切な人を守りたいという感情が俺にそうさせたのだろうということは分かるが、それは俺と対等でありたいと願うクレアに対する完全な裏切り行為であり、その関係性の発案者である俺が絶対にやってはいけない行為だ。


 「……ごめん、クレア。俺、いつのまにか、こんな」

 『……謝らなくてもいいよ……アスマ君は優しいから……私を大切にしてくれてるから……そうなっちゃったっていうのは……分かってるから』


 俺の働いてしまった裏切りに対して、クレアはそう言って肯定的な理解を示してくれるが、その優しさが今の俺の心には深く突き刺さる。……今の俺にはそんな優しい言葉を掛けてもらえる資格はないから。


 『……でもね……それでもやっぱり……アスマ君にとって……私は今も……自分が守ってあげないといけない……弱くて役に立たない子なんだね』

 「違う、そんなことは思ったこともない!確かに、守ってあげたいとは思ってるけど、それはクレアに傷ついてほしくないからなんだ!役に立たないなんてそんな」

 『……うん……分かってるよ……アスマ君は……人を傷つけるのが嫌いだから……そんなことを考えないってこと……たぶんそれは無意識なんだと思うよ……そう考えたことがなくても……無意識ではそう感じたことがあるから……それが……守ってあげないといけないっていう風に……なっちゃってるんだよ』

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