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準備6

 そうして、眠りにつけないまま過ぎていく時間の中であれこれと思考を巡らせていると、不意に外側から扉をノックする音が聞こえてきた。

 控えめな力で軽く扉を二度叩くこの感じに加え、このタイミングで俺の部屋を訪れる者とくれば、扉の前に居るのは間違いなくクレアだろう。

 だから、俺は相手を詳しく確かめることもなく扉の外へ向け「どうぞ」と、好きに入室してくれても構わないという風な言葉を掛ける。

 寝返りを打ち、頭を扉側へと向け閉じていた目蓋を開くと、微妙に焦点が合わず視界がぼやけてしまっていたので数度瞬きを繰り返すことで正常な視界を確保することに成功する。

 それと同時にゆっくりと開かれた扉の隙間からは、予想通りというべきか、クレアがひょっこりとその可愛らしい顔を覗かせていた。


 『……まだ起きてたんだね……アスマ君』

 「んー、まぁな。何か明日のことを考えてたら寝れなくなっちゃってさ。クレアもか?」

 『……うん……あの……だからね……眠くなるまで隣に居てもいい?』

 「あぁ、いいよ。というか、そんな遠慮しなくてもそういうことなら一緒に寝ようぜ。ほら、いい感じに温まってるぞ」


 笑顔で冗談を言うようにして布団の端を持ち上げこっちへ来るようにとクレアを誘うと、クレアはその顔を綻ばせながら後ろ手で扉を閉めると、小走りでこちらへと近づき頭から潜り込むように布団の中へと入ってきた。

 そして、自室から持ってきていた自分の枕を俺の枕の隣に並べると、いい笑顔を浮かべたままそこへ頭を沈めて真正面からこちらを見つめてくる。


 『……えへへ……温かいね』

 「ははっ、だろ?」


 そう言いながら、クレアは布団の中で自然と俺の手を取り自分の手と絡ませてくる。

 ……何だろう、今日はやけに積極的だな。ってまぁ、昨日までとは互いの関係性が大きく変わったんだから当然といえば当然、なのか?


 『……ねぇ……アスマ君』

 「ん? どうした?」

 『……これ……くっつけっこしよ?』


 そう言って、クレアはその細い指先で今日の昼頃に買ったお揃いのネックレスの片割れをつまみ上げていた。

 一瞬、何のことを言っているのかと思ったがそれのことか、と理解して寝る前に外し忘れてそのままにしていたネックレスを手にすると、目の前でクレアが掲げているそれに切り欠きを合わせるようにしてくっつけ、ハートのマークを形作った。


 『……やっぱり……可愛いね……これ』

 「そうだな。俺にはちょっと可愛いすぎるかもしれないけど、クレアには良く似合ってるよ」


 と、少しキザっぽくはなってしまったが、素直な気持ちを言葉にすると、クレアははにかんだ笑みを浮かべて喜んでいるようだった。

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