準備5
ベッドに入り目蓋を閉じる。
今日は朝から色々なことがあった。そのおかげで、肉体的にも精神的にも疲労が溜まっていることを実感していたので、その気になればすぐに眠りに落ちてしまえるだろうとそう思っていたのだが、それから数分の時間が経った今、まるで眠気を感じないことに僅かばかりの苛立ちを覚える。
正直、何故眠れないのか何となくその原因は分かっている。恐らく俺は自分で考えている以上に明日の任務に対して緊張してしまっているんだろう。
これまでにも魔物と戦う機会は何度だってあったが、今回とこれまででは状況が違う。
一番最初に戦ったゴブリンのことは置いておくとして、最初に自分から魔物と戦おうとした時にはミリオとアンネローゼが同伴してくれていたので、いざとなれば助けてもらえるという甘えがあったのでそれほどの危機感は抱いていなかったので言ってしまえば気楽なものだった。
冒険者になるために一人でオークを狩りに行った時は緊張感自体は覚えていたが、それでもあの時は何かあった場合でも犠牲になるのは自分だけだったので大した責任は抱えていなかった。
でも、その後にクレアのレベルを上げるために魔物を狩りに行った時に、守るべき対象がいる傍にいる状況での戦闘行為がどれだけ危険なのかということを実感させられてしまった。
一歩間違えれば大切なものを失いかねない状況というのは本当に恐いものだということをまざまざと思い知らされた。
それでも、あの場にはミリオがいた。最悪俺が犠牲になりさえすればミリオにクレアを連れ出してもらえることはできたから、ある意味では絶望的な状況ではなかったんだろう。
ただ、今回の任務ではミリオに頼ることはできない。アンネローゼやガルムリードもいない。俺が知る中で、確実に自分より強者である者が誰もいない。
カイルたちがあれからどれほど強くなっているのか具体的には知らないが、それでもあの数ヵ月でミリオたちよりも強くなっているということはないだろう。
だから、たぶん今回のパーティーの中では俺が一番強いということになるのだろう。まぁ、あくまでも戦闘能力の面だけを見ればだが。
そうなれば何か予想外のことが起きた場合、その対処は俺がしなければならないということだ。
逃げられる状況であれば迷わず逃げるという選択を取るつもりではいるが、その場合確実に何かを犠牲にしなければいけなくなるだろう。
絶対的な信頼を置ける者がいない状況で、何かを犠牲にしなければいけない状況に追い込まれた場合、俺はきっと……。
それは最悪の予想ではあるが、何が起きるのかが分からない以上そういうことも想定しておかなければならない。いざという時には、即座に行動へ移せるように。