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準備2

 クレアの言葉に微笑みながら頷く。

 何にしてもとりあえず今優先すべきは明日の任務なので、そのための下準備をしっかりとしておかないと。……間違っても誰かが欠けるようなことにはしたくないからな。


 「うし、それじゃあ明日の準備を済ませようか。ってことで必要なものとかの相談をしたいんだけど、いいかなミリオさん」


 何かある度に毎回ミリオを頼ってしまっているが、こういうのは先達に聞くのが一番だろう。

 後になってあれがないこれがないというようなことにはなりたくないし。


 「あぁ、そのことなんだけど、一応ある程度の準備はもう済ませておいたよ。もちろん二人分ね」

 「え?」


 そう言ってミリオはいつも食事をしているテーブルへと近づいていくと──背もたれに隠れてこちらからは見えなかったが──椅子の上に置いていた二つの雑嚢ざつのうを手にしてこちらに戻ってきた。


 「……いつの間にこんなものを」

 「さっき二人が街に出た時にちょっとね。もし泊まり掛けの任務になった場合、話し合いが終わってからその用意を始めると遅くなるし、夜にはお店も閉まっちゃうから先に用意しておいた方がいいかなって」


 ……なんという気遣い。

 正直、今のはかなりくるものがあった。何だよこのイケメン。本当に完璧人間かよ。不意に先回りしてこういうことをされるとそのかっこよさに思わず男として屈服してしまいそうになる。

 何というか一生その後ろをついていきたいと思わせる一種のカリスマ性のようなものを感じる。これがリーダーの資質というやつなのだろうか。

 今現在俺たちのパーティーは暫定的にミリオをリーダーとしているが、もう決定でいいんじゃないかな。

 単純な強さでいけばアンネローゼが断トツで一番だが、性格的にあの子に人を率いるのは無理だろうし、ガルムリードは自分から向いてないと言ってこっちに丸投げしてきたし、俺とクレアも経験不足なところを差し引いてもそういうタイプじゃないからな。

 ミリオになら自分の命を預けるのも悪くないと思えるし、あらゆる面でこいつ以上に頼りになる人間はいないからな。


 「はい、問題ないとは思うけど念のために中身の確認はしておいてね」

 「あぁ、ありがとう。いつも本当に助かるよ」

 『……ありがとう……お兄ちゃん』

 「うん、どういたしまして」


 礼を言ってミリオから雑嚢を受け取り言われた通りにその中を確認すると、水を入れておくための革袋、日持ちするように固く焼いたパンに乾燥させた果実や、干し肉に木の実類。軽い傷を塞ぐための軟膏に長めの清潔な布が数枚。松明に火打ち石、少量の油。あとは荒縄が納められていた。

 自分ではこれだけのものを準備することはできなかっただろうから本当にありがたい。感謝してもしきれないとは正にこのことだろうな。

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