報告12
「あぁ、それと効果を発揮させる場合は手を前に伸ばしてから発動させてみてくださいね。少し危険なので」
『……え?……あ……うん……わかった……それじゃあやってみるね』
……え? 危険なの?
クレアと同じタイミングで同じような反応をしてしまったが、俺よりも早くその困惑から立ち直ったクレアはシャーロットに言われた通りに右腕を前に突き出すと、手首に嵌めたブレスレットへと魔力を注いでいるようだった。
『……あっ!』
すると、その直後にブレスレットの中央に埋め込まれている宝石のようなものが光を放ち、その光景にクレアが驚きの声を上げる。
そして、その光はクレアの掌へと集束され光の球が形成されていく。
『……え?……え?……シャロちゃん……これどうすればいいの!?』
「慌てないでください。焦らず、騒がず、前方へとその光球を打ち出してください」
『……打ち出すってどうやって!?』
「この前に弟子がやっていた訓練を思い出してください。腕の延長線上に魔力の線を描いて、その線に沿うように光球を魔力で押し出して」
『……えっと……こうして……こう?』
それは確かに以前俺がシャーロットから教わって何とかある程度は扱えるようになった技術の一つだ。
この間まで俺が魔術を放っても真っ直ぐに飛ぶことがなかったのは、その魔力で線を描くという工程を省略して、形成した魔術をそのまま魔力で押し出していたからであり、本来はこのようにして魔術を放つまでにもう一つ準備の工程を挟まなければならなかったので、それが原因で俺の魔術は飛んでいく方向が荒れていたようだ。
とは言っても、誰もがその工程を必要としているわけではないようで、それを省略しても感覚的に魔術を狙い通りに放つことができる者もいれば、訓練によってその工程を省略できるようになる者もいるようだ。
まぁ、さすがに誰もがそんなに上手くできるというわけではないようだが、俺のように一ヶ月程の期間を費やしてもまだ不安定なのは逆に珍しいみたいだった。……最初に魔術の才能はそれほどないと言われていたけど、それを聞いた時は割とくるものがあったよな。
そして今、自力では魔術を扱うことができないクレアが俺のやっていたことを見様見真似で再現しているのをみて、自分とクレアの魔力操作の熟練度の違いに驚愕してしまう。
これまでに積み重ねてきた時間が違いすぎるので当たり前と言えば当たり前なんだが、それでもいざ目の当たりにしてしまうとその技量の高さに開いた口が塞がらない思いだ。
『……それから……こう!』
そうしてクレアは掌に集束していた光球を前方へと打ち出すと、その光球は数メートルの距離を飛んだ後その場で光度を増し、爆発するように店内を眩い光で満たした。