報告8
柔らかな表情で頬を赤く染め、大切な秘密を打ち明けるかのように言葉を紡ぐクレア。
「……はい?」
そして、そんなクレアとは対照的に、まるで何を言われたのかを理解できないという風に目を点にして間の抜けたような表情を浮かべているシャーロット。
何かを忘れているような気はしていたが、そういえばシャーロットにはまだその話をしていなかったな。色々なことを教わって、色々なことに考えを巡らせていたから完全にそのことについて言及するのを忘れてしまっていた。
普段から世話になっているうえに、クレアにとっては親友と言って差し支えのないシャーロットには話しておくのが筋というものなのに、他のことに気を取られてそんな重要なことを言い忘れるなんて薄情もいいところだろう。
今回はクレアが言ってくれたからよかったものの、今後はもっと自覚を持って必要なことはきちんと相手に伝えられるようにしっかりしないとな。
「えっと、それは、何というか、おめでとうございます?」
数拍の間を置いて、どこか呆然としていたシャーロットの意識がようやく再起動したようで、絞り出すようにこちらを祝福する言葉を掛けてくれた。
『……うん……ありがとうシャロちゃん……何の相談もしないでごめんね』
「いえいえそんな、おめでたいことなんですからそんなことで謝らないでください。いやー、でもあれですね、また何とも急ですね。クレアちゃんが弟子に好意を寄せているのは分かっていましたが、そういう関係になるのはまだ先の話だと思ってました」
まぁ確かに急な話ではあるよな。正直、結婚することを提案した、というか結婚の話を切り出した俺自身、自分の大胆な行動に驚いてるし。
「……あれ? でもクレアちゃんってまだ成人していませんよね? 今度の誕生日がきてもまだ一つ年齢が足りないはず、ですよね? え? まさかそういう?」
シャーロットはそう言うと、顔を引きつらせて「うわぁ」という風にこちらへあまり気持ちのよくない類の視線を向けてくる。
「その顔向けられると傷つくから止めて。何を言いたいのかは分かってるけど止めてくれ」
「いや、でもまさか弟子にそういった趣味があるとは思っていなかったので、少々驚愕しているというか何というか。その、弟子はあれですか、未成年の小さい子に対して興奮を覚える質の変た……変わった趣味を持った人物だったんですね」
「止めて!違うから!実際に結婚しておいて違うも何もないだろうと思うかもしれないけど違うから。俺はクレアのことが好きなんであって、別に小さい子が好きなわけじゃないから!」
「あ、はい。……でもそういう人に限ってそうやって言い訳するんですよね」
「そういうことぼそっと言うの止めてくれませんかね。俺も無意識なだけで本当はそういう趣味があるのかって自分を疑ったことは何回かあるけど、誰でもいいわけじゃないから。俺はクレアがいいだけだから!」
本当にそういった気がないのかを自問自答を繰り返して導き出した答えだから間違いないはずだ。決して俺はそっち側の人間じゃない。