報告7
「うん、よく分かったよ。ありがとう」
「はい、どういたしまして。それで、聞きたいことはそれで全部ですか?」
「えっと、そうだな、今はこんなもんかな」
というかそもそもの話、別にここへは質問をしにきたわけじゃないんだよな。いつの間にか流れでそうなっちゃってたけど。
来るのが遅れた理由は話したし、今日の分の魔術の訓練を休むって話もしたし、クレアに返す分の回復薬と明日の任務に備えての強壮薬も買ったから、ここにきた目的は全部果たしたはず、だよな?
「そうですか。では、夜も深まってきたようですしそろそろ家に戻ったほうがいいんじゃないですか? 明日は朝早くから出発するんですよね?」
「あぁ、朝一に出発だからそうさせてもらおうかな」
明日は朝の鐘で門が開いたら、北門から出る神聖国行きだかの乗合馬車に乗せてもらえるらしいが、時間厳守で出発するので遅刻は許されない。まぁ、家にはミリオとクレアがいるので寝坊することはないと思うが、帰って準備を済ませたらすぐに寝るべきだろうな。
でも、馬車って乗ったことがないから今から結構楽しみにしてるんだよな。乗り心地とかどんな感じなんだろう。
「それじゃあ、また明日……いや、帰ってくるのは明後日とかになるのかな? あー帰ってきたら顔出しにくるから、ってことでよろしく」
「はい、気をつけて行ってきてください。あ、くれぐれもクレアちゃんには怪我をさせないようにしてくださいね、弟子」
「当然、分かってるよ。それだけはどんなことがあっても絶対に阻止するよ。約束する」
「いい返事ですね。それでは任せましたよ」
「おう」
シャーロットと真剣に視線を交わらせてお互いに頷き合うと、がっしりと握手を交わして絶対の誓いを立てる。
そうして話すべきことは全て話終えたので、クレアを連れ立って家に帰ろうとしたその時。
『……ちょっと待って』
と、それまで積極的に会話に混ざっていなかったクレアが、俺たちに待ったを掛けた。
「ん?どうしたクレア。まだ何か用事が残ってたか?」
『……うん……アスマ君が話してる間……シャロちゃんに何て言おうか……考えてたんだけど……上手い言葉が思いつかなかったから……もうそのまま言うね』
「あ、ボクに用でしたか。はい、何ですかクレアちゃん」
クレアは覚悟を決めるように首元から下げているネックレスを握り締め、正面からシャーロットと向き合い、そして──
『……あのね……私……アスマ君とね……結婚したの』