報告5
「なるほどな。世の中そんなに甘くはないってことか」
「ですよ。まぁ仮に回復薬にそのような欠点がなく万能な薬だったとしても、頭を潰されでもしたらその時点でおしまいなので結局不死身には程遠いですよ」
「ま、それもそうだよな。本当に強い相手ならそれぐらいは普通にやってくるか」
あの時の《赤殻》を一撃で破ったゲインさん辺りなら当然できるだろうし、上位冒険者が相手をするような魔物でもそれは可能だろう。
そう考えると、相対するものが強くなればなるほど一撃を受けるリスクは飛躍的に上昇するということであり、攻撃をかわしたり捌いたりする技術が必要になってくるわけだ。
となると、回復薬っていうのはどちらかというとそういう技術が未熟な初級、中級の冒険者にこそ必要なものであって、一種の救済措置というやつなのかもしれない。
値段が馬鹿みたいに高額なのも、戦闘技術を磨いて強くならなければいつまで経っても他の物に金を回せなくなるぞっていう遠回しな警告なんじゃないだろうか。……いや、それは考えすぎか。
まぁ、何にしても回復薬を当てにして戦闘をしている時点で俺はまだまだ未熟者だってことか。ここから先に進むためにはやっぱりそこをどうにかしないこと駄目だってことなんだろう。
よくよく思い返してみればミリオやアンネローゼが回復薬を使っているのも買い足しているのも見たことがない。ガルムリードは知らないけど、そもそもあいつはどれだけ打ちのめされてもけろっとしてるからよっぽどのことがない限りは回復薬なんて必要なさそうだしな。
全力を出せば単純な身体能力ではあの三人にも引けを取らないところまではこれたんじゃないかと思っているが、技量では遠く及ばない。
一応パーティーに合流する時には盾役として入るつもりでいるので、何とか盾の扱いだけでも一定以上になっておかないといけないだろう。
ただ、今回の任務でカイルのパーティーと組むことになったのはある意味幸運だったんじゃないかと思っている。
あそこには盾の扱いに長けているオリオンがいるから、この際にその技術をできるだけ吸収しておきたい。
ゲインさんとの訓練で最低限の扱いだけは身につけたけど、それはあくまでも最低限だ。
そんなものは本職のものと比べれば児戯のようなものだから、この機会に実際に間近で見て感じることで今後の参考にしてみようと思う。
同じ駆け出しの下級冒険者だからそこまで圧倒的な技術を持っているということもないだろうし、見本にするにはこれ以上にない相手だろう。本当に今回の話は丁度よかった。




