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合同4

 その謝罪に対するクレアの答えは──


 『……うん……いいよ』


 と言った、特に悪態をつくこともなく非常にあっさりとしたものだった。

 それには流石のグランツさんも拍子抜けしたように呆然とした表情を浮かべている。


 「……あー、何だ、恨み言の一つでも言ってくれていいんだぞ?嬢ちゃんたちになら俺は何を言われても受け止めるつもりだしよ」


 あの件について負い目を感じていたせいか、グランツさんにしては少々弱腰な発言だ。

 だが、それも仕方のないことだろう。この人の性格は俺が把握している限りでは、豪胆で真っ直ぐなものであり、曲がったことや回りくどいことを嫌う質がある。

 そんな性格の人からしてみれば、ミリオやクレアが一部周囲から受けている仕打ちを面白くは思っていなかっただろうし、立場上のしがらみから強く周りを非難出来ない状況を歯痒く思っていたことだろう。

 だからこその先程の発言であり、それがこれまでにこの人が抱えてきた思いだったのだろう。


 『……恨み言なんて……ないよ?』


 だが、それに対してもクレアは『そんなものはない』と言い、グランツさんは顎に手を当てて少し困ったようにしている。


 「……そうか。じゃあ、恨み言じゃなくてもいい、他に俺に何か言っておきてぇこととかはないか?」

 『……それならあるよ』


 それまでとは違い少し俯いて考える素振りを見せたあと、クレアはぱっと顔を上げてそう言った。


 「おぉ、そうかそうか。何だ、言ってみな」


 ようやくクレアから欲しかった反応が返ってきたことに安堵したのか、グランツさんが前のめり気味に先を促す。


 『……えっとね……ありがとう』

 「……は?」


 予想していたそのどれとも違った言葉が出てきたのか、グランツさんは上擦った声で間抜けな反応をしてしまう。

 でもそんな反応が出てしまうのも仕方ないだろう。正直この場面で『ありがとう』なんて言葉が出てくるだなんて俺としても完全に予想外だったしな。


 「……そりゃあ、どういう意味だ?」


 たまらずにその真意を確かめるためにグランツさんはクレアへと疑問を投げ掛け、それにクレアが答える。


 『……あのね……これまで色んな人に……嫌なことを……言われたりして……きたけど……今まで一度も……暴力を振るわれた……ことはなかったの……でね……それは……ギルドマスターさんが……皆を止めてくれてるからだって……お兄ちゃんが言ってたの……だからね……ありがとうって……言いたかったの』


 ……そういえば、確かにこれまでそういったことがあったという話は聞いたことがなかったが、言われてみればそれはおかしな話だ。

 普通はそれほどまでに恨みや何かを抱えているならば、言葉だけではなく暴力に訴えるのがある意味では自然というものだろうが、それがないのにはそういった訳があったのか。

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