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反応

 扉を開くお馴染みの軽やかな鐘の音がギルド内に響き渡り、職員と数人の冒険者の視線がこちらへと向けられた。

 今朝に比べると中はがらんとしていて少し寂しげな雰囲気を醸し出しているが、それも当然だろう。

 この街の門は日が沈む頃に鳴る大きな鐘の音と共に閉じられ、山間から日が昇る頃に開かれるのでその間に街へ足を踏み入れることはよっぽどのことがない限りは出来ないようになっている。

 なので、この時間帯になると基本的には任務の事後処理を待っている冒険者かギルド職員しかいない。

 と、それはいいんだが、その人たちが先程から視線をこちらへと向けたままなのは何故なんだろうか。

 ……ってまぁ、今朝のあれが原因か。

 冒険者の人たちがこちらを見ているのは、たぶん俺が今朝の騒動を引き起こしたやつかどうかを見定めるためにそうしているんだろう。あの時は防具を着けていたから顔がはっきりとは見えてなかっただろうし。

 そして、職員の人たちは何度もここに通っている俺のことを知っているだろうから、今朝と同じように俺が暴れないかという警戒の意味を込めて見張っている感じだろう。別段仲が良かったという訳ではないが、顔見知り程度には知っている相手にそういう目で見られるのは何と言うか、ちょっと寂しい気持ちになってくるな。

 まぁ、そうなる原因を作ったのは俺だから文句を言える立場じゃないのは重々承知の上ではあるが。

 そうして、いたたまれない気持ちを心に抱き始めた時、受付の正面奥にある扉が開き、そこからテレサさんが姿を見せた。

 俺がそちらに気づいたのと同時に向こうもこちらの姿を認識したのか一度会釈をすると、彼女はこちらへと歩み寄って来た。


 「こんばんは。アスマさん、クレアさん。お待ちしておりました」


 ……あれ?反応が普通だ。

 テレサさんには今朝のことで直接的に迷惑を掛けてしまったので、顔を合わせたなら嫌な顔の一つもされるものだとばかり思っていたんだが、まるっきりいつも通りの対応をされてしまい少し困惑してしまう。


 「あ、その、こんばんは。テレサさん」

 『……こんばんは』

 「はい。それでは執務室にてギルドマスターがお待ちしておりますのでご案内致しますね」

 「あー、はい。お願い、します?」


 本当にいつも通りだな。

 おかしいな。罵倒、はされないまでも棘のある言葉の一つぐらいは吐かれるだろうと覚悟してたのに。

 まぁ、怒っていないのならそれに越したことはないんだが、想定していた反応と違いすぎて何か逆に恐いんだけど。

 と、そうこう考えている内に執務室に到着してしまった。

 その扉をテレサさんがノックすると、中から重厚感のある声で「おう、入れ」という短い言葉が返ってきたので、それに応える形でテレサさんが扉を押し開き俺たちに中へ入るように促してくる。

 クレアと頷き合い、意を決して足を踏み入れたその部屋の中には三人の人物が居た。

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