贈り物3
そうして並べられている一通りのアクセサリー類を眺めていたのだが、正直なところあまりセンスのよろしくない俺がこういったものを見たところでどれがお洒落なのかというがいまいち良く分からないのでクレアの方へと視線を向けてみると、楽しそうな笑みを浮かべて商品を見比べている最中だったので邪魔をするのも悪いと思い話し掛けるのは止めておくことにする。
すると、俺が手持ちぶさたにしているのを察したのか店主の男がこちらへと話し掛けてきた。
「ところでお兄さん、そちらの彼女さんとは付き合い長いの?」
流石に客商売をしているだけのことはあって自然にこういった気配りを出来るところに好感を覚えつつ、暇をしていたのは事実なのでありがたく話に乗らせてもらうことにする。
「そうだな、付き合い自体はそう長くはないぞ。そもそも知り合ってからまだ一年も経ってないし」
たぶん八ヶ月か九ヶ月ぐらいだった、かな?正直もうあまり細かく覚えてはないけどそれぐらいのはずだ。
そして、交際期間に関しては何と0日だ。恋人関係をすっ飛ばしていきなり結婚を申し込んだからなんだけど、詳しく説明する気はないからその辺は誤魔化させてもらう。
「へぇ、何か意外だな。すっごい仲良さそうにしてるからてっきり結婚秒読み、みたいな感じかと思ってたんだけど」
「いや、一応結婚はしてるんだけどな」
「……へ?あ、そうなの?そりゃまた随分お盛んなことで、ってお盛んは違うか。まぁいいや」
良くはないけどな。お盛んってなんだよ。人を猿かなんかと勘違いしてんのか?
「えっと、じゃあ指輪とか見に来た感じ?まだ着けてないみたいだし」
微妙に混乱しているようではあるが、そこは目敏く見ていたようでこちらへそう質問を投げ掛けてくる。
「や、指輪もその内に用意するつもりではいるんだけど、今はそれとは別に何か記念になるようなものを探してるって感じかな」
指輪については、以前にミリオと話した通り魔術が付与されたものをクレアの16歳の誕生日までに購入しようと考えているので、他で良い物があれば嬉しいんだが。
「ほうほう、そっか。あー、ならこういうのはどうよ?」
そう言うと男は机の下から小さな箱を取り出してその中身をこちらへと見せてくる。
「これなんだけどな。前にちょっとした思いつきで作ったはいいものの、商品として出すにはどうなんだろって思って仕舞ってたんだけど、どう思うよ?」
箱を開いたその中から出てきたのは、二本のネックレスだった。
が、別段変わったところがあるようには見受けられずそれの何を以て「商品としてどうなのか」が分からない。
特徴と言えば長方形のプレートの下端に少し歪んだ丸い穴が空いているぐらいのものだ。




