お出掛け
と、そんなこんなで一応俺たちの中では今回のことについての一段落がついたので、夜まで時間が出来てしまった。
この時間だとシャーロットのところに行っても迷惑になるだけだから魔術鍛練はギルドに任務の確認をしに行った後になるだろう。
いや、あまり遅くなりすぎてもそれはそれで迷惑になるかもしれないから、今日は顔を出して俺とクレアの関係が変わったことについての話をするだけにした方がいいかな。
シャーロットには俺もクレアも世話になっているし、クレアにとっては親しい友人なのだから話を通しておくのが筋だろうしな。
まぁでも、そうなると何をして夜まで時間を潰すかだよな。
いつも通りに戦闘訓練をしてもいいんだけど、結婚が決まった今日ぐらいは何か特別なことをした方がいいかもしれない。
「……よし。クレア、夜まではまだ時間があるしちょっと俺と一緒にお出掛けでもしないか?」
『……どこに行くの?』
「うーん、特には決めてないけどその辺りを二人でぶらぶらしたいと思ってさ。駄目か?」
『……ううん……行く!』
笑顔でこちらの要望に応えてくれたクレアに微笑み返し手を差し出すと、いつもと違い手を繋ごうとはせずに、こちらの腕に抱きつくようにして体を密着させ腕を絡ませてきた。
『……えへへ』
……可愛いな。
頬を緩めてにへら笑いを浮かべるクレアを衝動的に抱き締めてしまいそうになるが、急にそんなことをしても驚かせるだけなので心を強く持って自重する。
これは気をつけないとすぐに骨抜きにされそうだ。と思ったがもう既に手遅れ感は否めないので、今更無理に気を張る必要もないか。俺はもうとっくにこの子の魅力に心の底から惚れ込んでいるんだから。
そして、今日はもう街の外へ出る予定はなくなったということで装備を外して部屋から居間へと戻ると、同様に装備を外したクレアも戻って来たのですぐ様出発する流れになった。
「ミリオ、そういうことでちょっと出てくるな」
「うん、二人で楽しんできなよ」
「ははっ、じゃあ行ってくるな」
『……行ってきます』
そう言ってミリオへ手を振り、俺とクレアは特に目的もなく街へと繰り出すことにした。
『……えっとね……あそこがパン屋さんで……あっちがお酒屋さん……それでねあっちが……』
「ふんふん。あー、あんなとこに店あったんだ」
家を出た俺たちはとりあえずといった感じで街の中央を目指して歩き出したのだが、その道中でこれまでは気にも止めていなかった見慣れない看板を下げた店についてクレアに尋ねたことが切っ掛けとなり、そこから今更ながら俺の街案内が始まった。
この街に滞在してからそれなりの期間が経過しているにも関わらず、俺は未だに行きつけの店以外の場所について疎かったので助かってはいるのだが、自分が今まで本当に生きていくために必要なこと以外にはどこにも目を向けていなかったんだということに愕然としている。




