説明
「ただいま」
家へと戻り帰宅の挨拶と共に中へ入る。
すると、その声に反応してかミリオが自室からこちらへとやってきた。
「あれ、二人ともどうしたの?何か忘れ物でもした?」
俺たちの姿を確認すると、ミリオは予想外のことに少し驚いたような顔をしてそう声を掛けてくる。
まぁ、少し前に家を出たところなのに大した時間も置かずに帰ってきたら普通そう思うよな。
「あー、いや。忘れ物とかそういうのじゃないんだけど、何て言うか、その、ちょっとやらかしちゃってさ」
「……どうやら何かあったみたいだけど、いつまでもそんなところに立っているのもなんだし二人とも座りなよ。そこで聞かせてもらよ、何があったのか」
俺が歯切れ悪くそう言うと、その気まずそうな雰囲気を察知してかミリオがこちらに状況の説明を求めてきたので、勧められるままに椅子へ腰を下ろし先程の出来事を話始める。
「──っていう訳で、また夜になったら一度ギルドにその任務に関する詳細を聞きに行くことになってるんだけど、まぁそんな感じ、です」
「……なるほど、そういうことだったんだね」
簡単に事のあらましを話終えると、ミリオは納得したように頷きそう言った。
「正直そういう目に遭うこともあるんじゃないかとは思っていたけど、いきなり言われちゃったんだね。ごめん、それについては先に忠告しておくべきだったよ」
「いや、別にミリオが謝ることはないだろ。こっちが悪いことをした訳じゃないんだから変な言い掛かりをつけてくる方がおかしいんだしさ」
あの物言いは今思い出しても腹が立つ。こっちのことを何も知らないくせに先入観だけで悪者扱いしてくるなんてふざけるのも大概にしておけという話だ。
しかも直接被害を受けた人間だけでなく、関係のないやつにまでその噂が広がって全員で責め立てるような空気を作り出しているのも気に入らない。本当にいい加減にして欲しい。
「ははっ、そう言ってもらえるだけでも嬉しいよ。ありがとうアスマ」
「あー、そっか、うん」
そういう風に正面から素直に感謝されると少し照れ臭いけど、それでちょっとでも気が楽になってくれたのなら良かった。
「でもクレア。冒険者になるのならこれからもこういったことは言われ続けることになるだろうから、そんなことでいちいち落ち込んでいたら気が持たないよ。アスマは僕らに親身になってくれているからこう言ってくれてるけど、他の人も同じ風に思ってくれるなんて思わない方がいいよ」
『……うん、分かってる』
先程から少し落ち込み気味のクレアに対してミリオがそう言葉を掛けるが、相変わらず妹には厳しいなミリオさん。
もう少し優しくしてあげて欲しいと思わなくもないが、立場的にはミリオがクレアの保護者になるからこれも教育としての一環なのかもしれないし、俺が口を挟むのは野暮と言うものか。




