表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
268/644

衝動12

 『アクティブスキル《不動》発動』


 《不動》を発動させると、完全に静止した俺の脇腹にゲインさんの蹴打が叩き込まれ空気が破裂でもしたかのような炸裂音が周囲に響き渡る。

 だが、外的干渉を一切遮断するこのスキルの前ではどれだけ高威力の一撃であろうとも、それがどこを狙った攻撃であろうとも全てを無効化することが出来る。

 そして、この距離ならこいつを避けるのは無理なはずだ。


 『アクティブスキル《力の収束》発動』


 収束させるのは魔力。

 体の奥底から瞬時に引き上げたそれを右手に一点集中させる。

 強引に集めたせいで荒れ狂う魔力を押し止め、制御し、目の前の相手に右手を突き出す。

 放つのは風魔術。イメージするのは肉を裂き、骨を断つ風の刃。薄く、鋭く、そして高速で射ち出す風刃のその名は──


 「《ウインドスラッ──》」


 《ウインドスラッシュ》と、魔術名を口に出そうとしたその時、何故か脳裏に突然シャーロットの姿が思い浮かんだ。

 その光景は、以前魔力操作を教わりに彼女の店を訪れた時のものであり、何故魔術を扱えるようになりたいのかと尋ねられた時の記憶だった。


 『──貴様が他人に教えを請うてまで早急に力を求める理由はなんだ?』


 魔術を教えて欲しいと言った俺に対してシャーロットが放った疑問がこれだ。

 そして、それに対しての俺の答えは……。


 『──初めはさ、一人で生きていくための強さと金を稼ぐ手段が手に入れられればそれで良かったんだ──でも、守りたいって思う人たちに出会えたんだ──心地の良いその関係をなくしたくないって思ったんだ──でも、俺が弱いせいで、もう少しでそれを失ってしまうところだった──だから俺は、それをなくさないために、最後まで守り抜くために、強くなりたいんだ──』


 ……そうだ。俺がシャーロットから魔術を教わったのは、大切なものを絶対になくさないため、守り抜くために、足りない実力を補うことが目的だったはずだ。

 なのに、俺は一体、それで何をしようとしている?

 ……こんなことのために、こんなことをするために俺はこの力を手にした訳じゃない。何をしているんだ俺は。何をしているんだ俺は!


 「ッ!ああぁぁぁっ!!」


  歯を食い縛り意志の力で強引に舌の動きを静止させることで発しかけていた言葉を中断させ、中途半端に魔術へと変質してしまった魔力を右手で握り潰すと、そこを中心として衝撃波が発生し体が背後へと吹き飛ばされる。


 「ぐっ!」


 が、手足を地面に押しつけブレーキを掛けて体を停止させると、怪訝な表情でこちらを見るゲインさんに軽く頭を下げて謝罪する。

 そしてそちらから視線を外すと、壁際の床に座り込んだクレアの元へと一直線に歩み寄る。


 「……ごめん、ちょっと暴走した」


 と、開口一番謝罪の言葉を口にしその顔を覗き込むようにしゃがみ込むと胸に軽く拳を突き込まれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ