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衝動7

 痛みと怒りで視界が赤く染まる中、心の奥底から噴き出す暗い衝動に突き動かされるように関節を極められた腕を男ごと持ち上げる。

 それに対して目を見開き驚愕をあらわにする男を見やり腕に走る痛みを激しい感情で捩じ伏せると、体を男のいる方とは逆方向へ捻り地面に叩きつけようと試みたが、腕を振り回している途中で関節技を解いた男はその力を利用して俺から距離を取ると同時に先程投げ捨てた剣を拾い上げ、こちらから目を離さないようにして壁際まで後退していく。

 するとその先には平然とした表情でこちらを見下ろす大柄な男が居て、二人が合流したことで状況が振り出しへと戻ってしまった。

 いや、振り出しどころか明らかに状況はこちらにとって悪いものへと変化してしまっている。

 無理矢理関節技を外させたことで腕に鈍い痛みと妙な違和感が発生し、二人の男からは僅かにこちらを警戒するような気配が感じられる。

 ……強い。

 《限定解除》を使用した状態なら勝てないまでももう少しまともに戦えると思っていたが甘かった。

 正直単純な力や速度ではそれ程の差はないのもしれないが、技術や経験の差が如実に出てしまいそれが原因で先程からいいようにやられてしまっている。

 大柄な男は全開で使用した《力の収束》による急接近に反応するだけではなくそこからの攻撃に的確な対処を見せたし、剣の男はことごとくこちらの狙いを潰し更には反撃まで行ってきた上に、数度の打ち込みだけで俺ですら気づいていなかった《赤殻》の欠点に気づきそこを突いてこちらにダメージまで与えてくるといった徹底ぶりだ。

 技術面で俺はミリオたちにすら遠く及ばないが、この二人は確実にそれ以上に優れている。

 下級と中級ではここまで違うものなのか。

 ……どうする。

 このままではこいつらに勝つことは不可能だ。それに《限定解除》の効果時間のこともあるからこれ以上悠長にしている時間はない。

 なら、あれを使うか?

 自傷行為で《起死回生》を発動させればこの状況をひっくり返すことが出来るか?

 分からない。が、心はやれと言っている。

 目の前のこいつらを倒せと、邪魔者は排除しろと、そのためならどんな犠牲を負うことも厭うなと、感情のまま、衝動のままに己を解放して目の前の敵を破壊しつくせと。

 あぁ、そうだ。こいつらがやったことを忘れるな。こいつらがやったことは、俺の大切なものを傷つけたことだけは何があろうとも許すことは出来ない。その報いを受けさせるためなら俺はどこまででも狂い、堕ちて、壊れてやろう。

 それが俺の唯一譲れないものであり、俺が俺としてあり続けるための存在証明なんだ。

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