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衝動4

 「……その程度、だと?」


 俺の、俺が、もっとも大切にしてきた、これまでに何度も救われて、守りたいと心の底から思ったその気持ちを、あの子が受けた謂れのない中傷を、その程度と言ったのか、こいつは。

 何も知らないくせに、クレアが自分の両親のことについてどれだけ心配して、どれだけ心を痛めてきたか考えたこともないくせに。こいつは、こいつらは。どれだけ人を虚仮にすれば気が済むんだ!


 『怒りの感情が一定の基準に達しました。《獣の衝動Lv1》が《獣の衝動Lv2》になりました』


 ……あぁ、そうか。結局はこの二人もそいつと同類だってことか。そもそもそいつが言ってたじゃないか、周りの先輩たちがそう言ってたのを聞いたんだって。

 つまりこいつらは最初から俺が何で怒っているのかを知っていて、その上で俺がどう反応するのかを見て楽しんでいたって訳だ。

 ははっ、まんまとこいつらの掌の上で踊らされてたってことかよ。何だ、これじゃあ本当に馬鹿みたいじゃないか。

 ……ふざけやがって。そんなに人を貶めるのが楽しいか?自分たちが楽しければ何をしてもいいと思っているのか?

 もういい。そっちがその気ならもうどうだっていい……。


 「おいおい、流石にその言い種はねぇだろうよ」

 「む?言い方が悪かったか?いや、私はただ──」

 「もういい」


 これ以上こいつらの下らない三文芝居に付き合う気はないので会話を遮るように口を挟む。


 「お?そうか、こっちの言いたいことを分かってくれたか?」

 「あぁ、お前らの考えはよく分かったよ」


 俺が何を言おうが一切聞く耳を持ち合わせていないということも、俺を素直に解放する気がないってことも。だから──


 「だからもうお前らと話すことは何もない。ここからは、全力で行かせてもらう」

 『アクティブスキル《限定解除》発動』


 その宣言と同時に時間制限式のスキル《限定解除》を発動させ、全ての自己強化スキルを発動させることで今の俺が到達出来る最高点へと能力を引き上げ、《思考加速》によって引き伸ばされた世界の中で素早く周囲の確認を済ます。

 そして、先程の俺の言葉を聞いてどう勘違いしたのか知らないが背後の男の拘束が僅かに弛んでいたので全力で腕を前に引くと、男の体勢が前傾に崩れそのおかげで宙に浮いていた俺の足が地面に着く。

 だが、そんな俺を逃すまいと再度掴みかかってきた男にわざと抱え上げられると、その反動を利用して頭を全力で背後へ叩きつける。

 すると狙い通りにそれは男の顔面を捉え予想外の一撃を受けた影響からか途端に拘束が甘くなったのでその隙を逃さず締めつけられていた腕を強引に引き抜く。

 そして、予め確認しておいた誰も居ない空白地帯へと飛び退き体勢を整えると、二人の男に注意を向ける。

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