影響
数十日に渡って実戦による経験を積み重ねた俺とクレアは着実に成長を遂げ、俺は新たなスキル《誘引》と《硬化》を取得することが出来た。
盾を使っての戦闘にもある程度は慣れてきたし、今回クレアに付き合って実戦をこなしたのは俺にとってもかなり有意義なものとなったのは嬉しい限りだ。
だが少し予想外のこともあり、当初は冒険者として最低限のレベルまでクレアに戦闘経験を積ませ魔物との戦闘に慣れさせることを目的としていたのだが、今現在のクレアのレベルは8まで上昇していた。
というのも、元々クレアに無理をさせずにレベルが5に到達するのには一ヶ月程度の時間は掛かるだろうという予測をミリオは立てていたのだが、半月が経過した辺りで既にクレアのレベルは5まで上昇してしまっていたからだ。
半月が経ちレベルが5に到達した段階でレベル上げを中止してもよかったのだが、どうせならもう少し経験を積んで戦闘に慣れておくのも悪くはないだろうということで最初に決めていた通りその後の半月間でも前半と同様に戦闘を繰り返したことによって目標にしていたレベルを超えた成長を見せたという訳である。
でも、何でクレアがそのような急成長を遂げたのかという理由がはっきりとは分かっていないのだが、それについて思い当たる節が一つだけあった。
以前に取得したスキルの中に《成長因子》という、自身と最も魂の繋がりが深い者に自身の経験を他者と共有しその成長に影響を与える、などという効果のスキルがあったのだが恐らくそれが今回のことに関係しているだろう。
魂の繋がりうんぬんに関しては相変わらず分からないままだが、自身の経験を共有するという効果によって俺が得た経験をクレアにも知らず知らずの内に分け与えてしまっていたのでは、と考えると予想外にクレアのレベルが上昇していたことにも説明がつく。
つまりは俺が稼いだ経験値とクレア自身が稼いだ経験値、その二つをクレアは獲得していたということになり、通常の二倍の速度でレベルが上昇していたということなんだと思っている。
パワーレベリングとはまた違うが、これがクレアにとって良いことなのかどうかと言うのは正直よく分からない。
単純にステータスの上で強くなるという目的は果たせるのだが、同レベル帯の者に比べて実戦経験は半分ということになりそれが後々どのように影響してくるのかが少し心配ではある。
だが、だからと言って常時発動型のこのスキルは解除するということも出来ないので、その分の経験は模擬戦などによってどうにかして補っていくしかないだろう。戦闘経験の不足は命に係わってくる重要な欠点だからな。




