レベル上げ8
「おお」
クレアによるあまりにも手際の良い一連の動きに思わず感嘆の声が漏れ出てしまう。
攻めて出やすいように隙を作ったつもりではあったけど、以前の戦いぶりを思うとまさかここまであっさりと勝負がつくとは思わず驚くと共に感心してしまった。
「やるなぁクレア。今のはかなり良かったぞ」
一瞬の隙を見逃さないあの動きはまるでミリオを彷彿とさせるような勝負勘を感じさせられた。
やっぱりそういうところが似ているのは流石兄妹と言うべきなんだろうか。
『……えへへ……ありがとう……。……お兄ちゃんにね……色々……教えてもらったから』
なるほど、これがこの二日間ひたすら模擬戦を続けていた成果という訳か。
にしても、短期間教わっただけなのにいきなり実戦でこれだけの動きが出来るなんてこの子は天才なんだろうか?
もちろん努力で築き上げた土台があってのことなんだろうが、それでもその成果を余すことなく結果として出すことは普通なかなか出来ることではないからな。
「そっか。すごいなクレアは、本当に大したものだよ。でも、一応止めを刺せてるかはきっちりと確認しておけよ。魔物の生命力は侮れないからな」
クレアにそう言って、俺は手にした槍で地面に倒れ伏した二体のゴブリンの頭部を念入りに突き刺して確実に処理していく。
『……うん……わかった』
「よし。っと、クレアちょっとそのままじっとしててくれ」
クレアの顔を正面から見ると、頬の辺りに先程のゴブリンの返り血が付いていたのでポーチの中から取り出した布でそれを拭い、水魔術で濡らした布でもう一度拭って血の跡を消していく。
「うん、綺麗になった」
『……ありがとう……アスマ君』
「おう、どういたしまして」
血を拭った時にも思ったことだが、お礼を言葉を掛けてくるクレアの顔色には特に変わったところは見られず、受け答えもしっかりしていることから以前とは違い今回は精神的にも非常に安定しているようだ。
それ自体は喜ばしいことなのだが、何がどう作用してクレアの精神状態に安定をもたらしたんだろう?
一緒に戦ったのが良かったのか、それとも以前の経験でクレアの精神が成長したのか、或いは両方か。
まぁどちらにせよこの子にとってそれは良い変化であることに間違いはない訳で、このまま成長を続けていけばそう遠くない内に冒険者として活動することが出来るようになるだろう。
そのためにも今は出来るだけこの子の支えになれるように俺も努力を続けることにしよう。




