レベル上げ2
「これから森に入っていく訳だけど、前回の反省を踏まえて今回はアスマとクレアは入ってすぐの木々が少し開けた場所で待機しておいて。魔物は僕がそこまで引き付けてくるから、それまでに異常を感知したらすぐに二人で逃げるようにね」
森へ入る前に小休止を兼ねて武器や防具の再点検をしていると、ミリオからそのように指示を受けた。
「ん、まぁその場合に逃げるのは賛成なんだけど、そうなったらミリオはどうするんだ?一人じゃ危なくないか?」
一対一ならともかく複数体の魔物に囲まれた場合その包囲から抜け出して、逃げ出すのはかなり困難なことなんじゃないかと思うんだけど。
「いや、こう言ってはなんだけどただ逃げるだけなら正直なところ僕一人の方が逃げ出しやすいんだよ。何て言うかそっちの方が慣れてるからね」
あー、そういえばミリオはアンネローゼと知り合う前はずっと一人で任務を受けたりしていたんだったな。今でもたまに受けているけど。でもそれならある程度の危険は一人で回避出来たとしてもおかしくはないか。
というか、やっぱりこの前のウルフと戦闘になった時は俺たちがいたからミリオも逃げ出さずに戦ってくれたってことか。……迷惑掛けてしまってすまんね。
「なるほどな、そういうことなら分かった。俺たちは戦闘態勢を維持しながら辺りを警戒していつでも逃げ出せるようにしておけばいいってことだな」
「うん、それで頼むよ。それじゃあ行こうか」
「おう」
『……うん』
そう言って歩き始めたミリオに俺とクレアが同意の返事をし、その後ろに付いて森へと足を踏み入れる。
森に入った瞬間、鬱蒼と繁った木々が視界を奪い葉の揺れる音や小さな動物の鳴き声が妙に耳に付いた。
そして、土や水、樹木の香りが鼻腔を刺激し気持ちが安らいでくるが、ここはもうすでにいつ魔物が出てきてもおかしくない領域なので前を歩くミリオとクレアを視界に収めつつ、辺りを見回し最大限に警戒を行うが、今のところは特にそれらしき気配はなく進行方向にも魔物の姿はない。
「よし、じゃあ危険がないか辺りを索敵した後ここへ魔物を連れてくるから二人はここで待機しておいて」
「あぁ、気を付けてな」
『……いってらっしゃい』
俺とクレアの言葉に一つ頷いて見せて、ミリオは気負いを感じさせない足取りで木々の向こう側へと姿を消して行った。
流石はミリオさん、全くもって頼もしい限りだ。




